アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
11 僅かな変化
-
俺はその足で忍の家へ向かった。
すぐに実行、というよりは落ち着かなくて無意識に動いていたって方が正しいのかもしれない。
深い溜息が目に取れるように白い息が伸びる。
すっげー寒いと思ったら、雪が降ってきた。しかも、向かっている途中でどんどん強く降ってくるから到着する頃には足元はもう真っ白。
雛瀬のやつ、本当に風邪引くんじゃねーかとか呑気に考えられる程度には冷静だった、いや、もうどこかおかしいから頭の中に逃げ場とか用意してるのかも。
後から知ればこの日は記録的な豪雪だったようで、寒いのなんのって。
もう2月間近だし確かに雪が降ってもおかしくないけれどこうして年が明けても忍の家の前でつっ立ってるとか、本当俺ってばストーカーみたい。
近所の人もよく通報しないよね。
【忍、今日は雪降ってるよ】
はい、反応なし。
肩や頭に沢山雪が積もって、どんどん重たくなっていって、足元は雪でうもっていって、冷え過ぎて感覚なくなったわ、ボケ、忍のボケ。
【どんだけ待たせるの、お前の事好き過ぎて顔みたい、俺お前が出て来てくれないとストーカーじゃんどうしてくれるの】
ついヤケになってそんなメールを送ってしまった。
その、20分後だった。
動けなくていつもの倍そこに佇んでしまっていたことに漸く気付いて帰ろうとした瞬間。
カーテンが動いたのを見逃さなかった。
…そこには、痩せこけた忍がいた。
何だか随分男らしくなった気がする、肩幅?身長?遠くからだとはっきりわからないけれど、華奢さは変わらないのに男の子だと判別できるようになっていた。
指で携帯を見て欲しい、とアピールすると戸惑いながらも手元にある携帯を視界に収まる位置まで持ち上げてくれた。
ああ、あのストラップ。ちゃんと付けてくれてる。夏休みの最後にデートしたときにお揃いで買ったやつだ。
【痩せた?】
メールをみてただ一回頷きを見せた忍は返事を返すでもなく、こちらを見つめた。その瞳からはあの日、俺が告白した日と同じくらいの大粒の涙が零れ落ちている。
俺はやんわりと微笑んでもう一度携帯を指さす。
【ダメじゃん、飯食べないと。抱きしめたとき痛い。】
見上げれば、今度は少し長めに画面をみて更に泣き出す忍が見えた。
そして、首を横に振った。目に見えて分かるほどに顔色が悪いし、俺ももう体力が限界だった。
【好きだよ。また明日、同じ時間に来るから、顔見せて】
続けてそう送ると、何度も何度も頷く。拒絶はされていない。
忍に対する変わらない愛情を込めて笑顔を送り、ひとまず顔を見れた進歩に動かない身体を引き摺るように俺がぶっ倒れて救急車で運ばれる前に一旦引き返す事にした。
間違いなく何かがあったけれど、原因がわからないし、無理やり引きずり出してもああ見えて忍は頑固だから絶対に出てこないし言わないだろう。
俺はどうしたらいい?忍。
どうしたらお前を笑わせてやれる?
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
12 / 17