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乙女ゲームの悪役令嬢の兄に転生したんだかいつの間にか俺が攻略対象を攻略していた件について
初めて言われた。
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「ほらしっかりなさいトバリッ!そんな風にへこたれるように私は育ててません!」
お母様がもう息絶え絶えには素振りと腕立てを繰り返している俺に言葉の鞭を飛ばす。
訓練を開始してから1年と半年が過ぎた頃、俺はやっと素振りをさせてもらえるようになった。
まぁそれ以前からお母様にはアルフレッドに内緒で組手も教えてもらっているわけなのだが、いかせんお母様の言葉の鞭は辛い。
「はい終了!よく頑張りましたトバリ、休憩に入ってください。アルフレッド、練習メニューはあなたに渡しておきますのでトバリをよく見ていおてくださいね。」
そう言いながらお母様はそそくさと退散していった。おそらく俺たちのために何かを準備するために出て行ったのだろうと俺は考えがついていたがそれをアルフレッドに言えるほどの体力も惜しい、あの鬼はお母様がいない間も特訓をさせてくる。
いくら前世と今世の年齢足したら三十路になりかけのおっさんでも、ちいさな子供の体で それはきつい。
いやお母様が考えてくれたメニューは体に無理をさせない程度のものだからただ単に俺のメンタルが弱いだけなのかもしれないけど。
「ほーら愚図まだメニュー半分しか終わってねぇぞ?」
ニヤニヤとしながら自分の訓練メニューをすでに終了したアルフレッドが俺に言葉を投げかけてくる、本当にうざい。さすが子供。
「…うるさいです」
なんとか絞り出した言葉を言った後俺はゆっくりと確実にそのメニューをこなしていった。
その間アルフレッドは何か神妙な顔つきで俺を見たり首をひねったり、少しランニングをしたりなどして時間をつぶしていた、
俺の顔はよくお母様のお姉さま、つまり叔母さまの顔に似ていると言われる。
お母様のようにパッとした美人ではなく平凡顔の叔母さま似だと、悲しいことに俺はお母様の子供だと気づいてもらえたためしがない。
そんなに顔が似てないのか、もしかしたら叔母さまの子なんじゃないのか、と思ったりも時々するんだが…俺に悪運とか俺の癖とかはどうやらお母様譲りらしく、そういうところでお母様の子供だと再確認するのだが、他人からは本当にお母様に似ていると言われた試しがない。
と言いつつ俺は叔母さまには小さな頃に一回だけあっただけなのでよく知らない、時々アルバム写真を見て本当に平凡顔だな、と考えるだけで特に印象もないただの親戚の叔母さまだ。
だから実感もわかないし、お母様がいるのに似てないと言われるのはすごく腹がたつ、マーリンはお父様にそっくりなところが多いしお母様の特徴も受け継いでいるからああ、さすがお二人の子供、と言われるのにだ。
俺は時々それに腹が立っていじける癖があった。
まさか今日もいじける事になるとは思わなかった。
お母様に書類を届けに来た聖騎士団の騎士が俺に向かって言った言葉が俺をいじけさせるには十分だった。
「ほう、放浪癖のあるミラン様の姉上様のご子息もミラン様に稽古をつけてもらっているのか、親戚にいい武道に秀でた人がいてよかったな坊主、」
と言ったのだ。
俺はその言葉を曖昧に笑ってごまかした。ここでミランの子供だと言っても意味はないのだ、だって本当に俺とお母様は似てないのだから。
「せいぜい頑張れよ坊主」
少し乱暴に俺の頭を撫でて出て行った騎士はお母様のもとにいって2、3言話してから出て行った、
「俺ってそんなに似てないのかな…」
確かに、性格はかけ離れている、だって俺には前世の記憶があるから、それでも今世の親だって俺の親なのだ、それを根っから否定されてるみたいで本当に嫌だった。
「似てるだろ」
半分いじけモードに入っていた俺に声をかけたのはさっきまで黙って端っこで休憩していたアルフレッドだった。
あの騎士が来てから黙りこくっていたアルフレッドがいきなり話しかけてきたものだから俺は少しびっくりした。
「お前はミラン様と目がそっくりだ、もうそりゃ生き写しみてぇにな、そっくりで俺だって一瞬びっくりするんだぜ?」
アルフレッドはなんでもないように言いながらため息をついた。
「お前が目を細めた時とか、すげぇミラン様に見られてるみたいでドキッとすんだよ、なんか殺意はねぇけど殺されそうな感じがあって」
ずいぶんひどい言を言われているはずなのに俺の心はポカポカしていた。
「お前の目はミラン様にそっくりだ、俺が言うんだから間違いねぇ」
それで似てねぇとか抜かすなら叩くぞ愚図、少しむすっとしながら俺に言うアルフレッドは俺を見てため息をついた。
多分アルフレッドは貶したつもりなんだろうけど、俺にはけなされたというより、それ以上に 初めて お母様に似ていると言われた事実が嬉しかった。
「本当に?俺、母さんに似てるのか?本当?」
あまりにも嬉しくて前世と同じ話し方になってるけどこの際は気にしてられなかった。アルフレッドは少しびっくりしたような顔をしてから、ああといった。
「これでお前がミラン様みたいに強くなれば、本気でミラン様の子供だって思うと思うぜ?」
俺は多分初めてこいつの前で綺麗に笑ったと思う。それほど嬉しかったから、ここ生まれて十数年間一度も言われたことがなかったことを言われ俺はきっと嬉しかったんだと思う。お母様に言おう、だって初めてだから。
「ト、トバリお前」
俺はその時もうお母様が来たら言おうと考えていたことで頭がいっぱいでアルフレッドが顔を真っ赤にして俺を見ていたなんて気がつかなかった。それと俺を木陰から覗いている人にも気がつかなかった。
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