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side一期一振
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本丸での彼の振る舞いは自由そのものだった。
非番の日には、昼過ぎに起き出して来たかと思えば、短刀たちをからかって。
夜になれば、酒を飲んで明け方まで一騒ぎ。
見た目を裏切り続ける彼の言動は、私にとっては「愚行」そのものだった。
「鶴丸殿っ!貴方またうちの弟に良からぬことを教えたでしょう!?」
「いやいや、ちょーっとだよ。ちょーっと驚きを与えただけじゃあないか」
「人様の袖や襟元に、蛙を忍ばせることのどこが『ちょっと』ですか!」
こんなやり取りも、もう何度した事だろうか。
先に鶴丸殿が、本丸に来ていたことで弟達は随分彼になついていた。
元気で過ごしてくれていて、それをサポートしていてくれた事は、誠に有難いことではあるが。
鶴丸殿のひょうきんな性格に影響された弟たちは、悪戯好きへと成長をしていた。
いや、成長?
成長と言っていいのであろうか。
楽しそうに悪戯する弟たちを、追い回し注意して、迷惑をかけた皆さんに謝りにいく日々。
それが私にとっての日常に成り果てていた。
鶴丸殿は、その様子を心底楽しそうに笑って見ていた。
私の行為を嘲っているようにさえ見える、その笑顔ですら眩しく美しいものに見えるのだからたちが悪い。
「兄というのも大変だな」
「誰のせいだと思っているのです・・・」
呆れと諦めを感じながら、鶴丸殿の座っている縁側に腰をおろす。
「まぁ、貴方のおかげて弟たちがこうして元気に過ごしていたのは違いないですからなぁ、そこは感謝しておりますよ」
「お褒めに預かるとはね」
「褒めているつもりはありませんが・・・」
「そうなのか?それは残念だ」
鶴丸殿はそう言って、だらりと上体を縁側の床に下ろして寝転がる。
日の光をまともに受けて、少し眩しそうに睫毛を伏せる。
色素の薄い睫毛にキラキラと光が反射して美しかった。
彼はその瞳に何を映しているのだろうか。
同じ景色を見てみたい。
その衝動に逆らえず、自分も寝転がってみる。
視界いっぱいに青い空がどこまでも高く広く映った。
思わず「わぁ」と感嘆の声をあげそうになる。
遠くで短刀たちの高い笑い声が聞こえて、さわやかな空気を改めて感じられる。
「鶴丸殿は面白いお方ですなぁ。弟達が好んで貴方と関わろうとするのもわかります」
「それは今度こそ褒め言葉か?」
「ふふ、今度は、そう受け取って頂いても構いませんよ」
おそらく、この方は、私と全く違う視野で物事を見ているのだろう。
こうやって同じように寝転がって、同じものを見ても、きっと彼には私とは違う景色に映っているのではないか、と思ってしまう。
常々驚きという名の新鮮さを求めていく様は、どちらかといえば保守的な私とは対照的だ。
それ故に、私にとってこの鶴丸国永という男は魅力的だった。
何にも捕らわれない自由さ、誰にも曲げられない強さ。
もっと知りたい。
もっと近づきたい。
あぁ、その瞳に映るのが自分だったら、どんなに幸せか。
そんな思いがとめどなく溢れてくるのを自覚するまで、時間はかからなかった。
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