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side鶴丸国永
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ずっと声を出すのを我慢していた一期の声が、部屋に響くのは少し不思議な気分だった。
「も、申し訳ない・・・」
心底すまなそうな声で謝罪の言葉を口にする一期が、どうにもいじらしかった。
仕掛けたのは俺からで、謝罪する必要があるとすれば、こちらの方なのだが。
「気持ち良かったか?」
悪戯心を覗かせて、尋ねてみると、一期は視線を所在なさげにきょろきょろと動かしたあとで、ぎゅっと目を閉じ、勢いよく首を縦に振る。
「なら良かった。ちょっと手洗い場に行って来る」
俺はさっと自分の着物を直し、自分の部屋を出る。
都合の良いことに、自室のすぐそばには手洗い場が設置されている。
余程すぐそばに気配を感じない限り、誰かと出会うことはない。
今日ほどこの場所に自室が用意されたことを、有難いと思ったことはないだろう。
冷たい水に手をさらし、粘ついた感触がするすると流されていく。
あぁ、勿体無い。
味わっておくべきだったか?
いや、あれには自分のも混ざっている。そんな阿呆なことしないで正解か。
白濁液の味というものに、驚きがあるかはわからないが、興味はあった。
けれど自分自身から吐き出されたものを口に入れようとは思わなかった。
部屋に戻ると、そこには、既に身支度を整えた一期が立っていた。
先ほどの乱れようなど、一切感じさせない、優雅な佇まい。
それは、俺とのことを無かったようにする意味でもあるのか、と疑いたくなるほどだ。
「もう帰るのか?」
「えぇ。そろそろ弟達もおやつを食べて縁側に戻って来ている頃でしょうから。あまり空けておくわけにも行きません」
怪しまれるわけにはいかない。
当然の言い分だった。
部屋にとどめておくための台詞など、到底思いつくはずもなかった。
俺は、一期に近づくと手を握り「また、な?」と念押しする。
言葉が出てこない瞬間というのは、こんな風になってしまうのかと自分で自分に驚く。
一期は、そんな不器用すぎる言葉の意味を、器用に察して軽く頷いて部屋を出て行った。
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