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side一期一振
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会えなければ会いたくなり。
会えば話したくなり。
話せば触れたくなり。
自分が満たされる日は来なかった。
ちょっと時間が合わず、すれ違っているだけ。
きっと二人きりになれば、前のように接して頂けるはずと信じるしかなかった。
でもきっと、それももう望み薄なのだろう。
出陣から帰って、何度か夜中に部屋を訪ねてみたけれど、いつ行っても彼の姿はなかった。
出払っているのだから、居ないのが当然なはずなのに、帰る場所を失ったようで、無性に寂しかった。
暖かく迎え入れてくれた灯りも笑顔も腕も言葉もない。
ただ、暗いだけの部屋。
その度に、自分の中にわずかにあった期待を打ち消され、期待した自分を恥じた。
こんな浅ましい期待に応え続けてくれていた鶴丸殿を思うと、情けなくもなった。
私は彼に何時まで縋るつもりなのだろう。
こんなに長く会う時間も取れないまま、寂しさばかりを募らせて。
もし奇跡的に触れ合うことが出来たら、きっと私は恥も外聞もなく鶴丸殿に泣きつくのだろう。
寂しかった、苦しかったと我侭を言って彼を困らせてしまうだろう。
そうしたら、流石に手放されてしまうだろうか。
明るい口調で「面倒は御免だ」と言われてしまう所まで、随分簡単に想像がついた。
「どうした、いち兄?調子悪いのか?」
不意に薬研に声をかけられ、はっっとする。
「いや、何でもないよ」
「浮かない顔をしていたが」
「大丈夫」
私は前田や秋田にも見えるように、大きく首を振って、薬研の心配を否定した。
こんな状態で、弟達に心配をかけていてはいけない。
今は、与えて頂いた任務をこなさねば。
あぁ、そうだ。
せめて、せめて、この不安が見透かされないように。
私に出来ることは、平静を装い続けることだけ。
彼へ向いている全ての欲を抑えることだけ。
帰ると、鶴丸殿の所属する部隊は既に本丸を出立したと聞いた。
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