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side一期一振
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「ただいま戻りました」
出迎えてくれた面々と挨拶を交わし、本日の馬当番に馬を預ける。
さすがに連日の出陣は疲れるな・・・。
でも、弟達も順調に育ってくれているし、私が手を出す必要がなくなる日も近いかもしれない。
一人立ちしてしまったら、少し寂しい気もするけれど、喜ばしいことだ。
そんなことを考えながら、自室に戻ろうとすると、強引に腕を掴まれる。
振り返ると、そこには鶴丸殿の姿があった。
「悪い、薬研。今日は一期を借りる。明日の出陣までには返すから、主への報告頼む。他の弟連中にもそう伝えておいてくれ」
まくし立てるように言い放つ。
いつもは飄々としている鶴丸殿が、眉根を寄せ余裕をなくしている姿を見るのは初めてだった。
薬研は「はいはい了解」と、手をひらひらさせながら私を送り出した。
私が驚いて声を失っているうちに、話がつき、ぐいぐいと私の腕を引き鶴丸殿は自室の方へと向かっていく。
我に返り私はその腕に逆らい立ち止まった。
「一期・・・?」
不振そうに私を睨め付ける鶴丸殿。
「出陣から帰ったばかりで、まだやることが色々とありますから・・・」
砂埃や汗まみれの状態で彼の自室に入るのは躊躇われた。
せっかく久々にお会い出来たのだから、少しは身奇麗にしておきたい。
「悪いが、それは後回しにしてくれ」
低い声が否定の言葉。
それはまるで脅しのような暗さを含んでいた。
部屋に雑な手つきで放り投げられるように入れられて、勢い良く座敷に膝をついてしまう。
「何で急にこんな真似・・・」
すれた膝がわずかにジンジンと痛み、思わず恨み言を言ってしまう。
「急か?」
「帰って早々連れ出しておいて、急でないとでも仰りたいのですか?薬研に報告まで任せてしまって・・・」
「兄としては不甲斐ないと?」
「その通りです」
「・・・気に入らないな」
短い舌打ちと、言われた言葉に驚いて、鶴丸殿の顔を見る。
瞬間、自分の喉がヒュッと鳴り冷たい空気が入り込んできた。
美しさはいつもと変わらない。
初めて出会った時のように、凛としていて、品があって・・・。
でも、これは誰だ?
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