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side一期一振
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手入れ部屋に着くと、ちょうど前田と、秋田が出てくる所だった。
あぁ、ちゃんと手伝い札を使ったんだね。
今日は大変だったね、もうゆっくり休みなさい。
そう声をかけてやりたかったが、うまく声にならなかった。
無理に話すと、口の中に溜まっている血液を吐き出して、より心配をかけてしまうだろう。
「どいてくれ!一期が危ない!」
余裕のない鶴丸殿の声は、すぐ傍で喋っているはずなのに、遠くに聞こえた。
すぐに、二人の悲鳴が聞こえた。
それもやっぱり、どこか遠くて。
心配をかけてしまってるな。
あんなに心配かけたくなかったのに。
私は駄目な兄だな。
「お前ら兄弟なんだから、甘えてばっかいないで、ちゃんとあいつのこと見てろよ!」
鶴丸殿の怒声と、弟達の泣き声を聞きながら、私は手入れ部屋に入れられる。
すぐに部屋の襖がしめられる。
鶴丸殿は、私の身体を支えたまま、一緒にいる。
もう周りの状況も、把握出来ないけれど、それだけは身体から伝わる熱でわかった。
鶴丸殿の身体から丁寧に下ろされ、寝かされる。
「いいか、この札使え。俺のだ。やる。俺からのなんてもう一期は嫌かもしれないが、でも俺は・・・」
嫌なんて。
そんなことあるわけないのに。
あぁ、もう何も言葉にならない。
その言葉の続きを聴き終わることがないまま、私は意識を手放した。
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