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後悔と消滅と…?(病み、グロ)
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あのときカメにちゃんと伝えればよかったと
今でも後悔が拭えない
あのときの記憶は今も残る
消えてゆくカメを
ただ見つめているだけしか
できなかった自分に
イライラが隠せない
気づいたら自分で自分を傷つけ
全身が傷だらけだった
こうなった理由は……俺の中に……
「もういくよー!」
その声に少し気だるそうに返事する。
「んぁ……あと五分……」
「何言ってるの!もう八時だよ!
八時半に集合場所って言ったじゃん!」
「あ゙ぁっ!?なんだよ!ちゃんと言ってくれよ!」
「何度も起こしたのに!」
ぎゃーぎゃーと言い合いする。
それも少し距離があるから声は大きい。
俺は自分の部屋であいつは玄関。
つまり。
俺の寝坊だ。
「先いくからね!もう知らないよ!」
ちなみに集合するのは俺とあいつと良太郎だけだ。
とにかく今すぐ準備して間に合うか。
あいつは玄関のドアを開けて出ていく。
ひとりで取り残された俺はとりあえずご飯を食べようと起き上がる。
部屋を出てリビングに行けば、用意してあるのはシリアル。
あいつは用意周到なところがあるから安心だ。
俺はそのシリアルを急いで食べ、顔を洗い髪にワックスをかける。
つんつんと髪を立たせればいつもの俺だ。
赤メッシュは生まれつきのようなもの。
いつもの赤いTシャツを着て、茶色いズボンを履いて用意はおしまい。
あとは自分の気持ち入れにと靴を選んでみたりする。
が、今回はそんな時間もなく、出されていた赤いスニーカーを履いて外に飛び出した。
そしてぎりぎり間に合った。
俺と良太郎、そしてあいつ。
カメも良太郎も、すごくつらそうな顔だった。
そして、良太郎の重たげな口から、とある言葉が零れた。
「ウラタロスが、消えるかもしれない」
「………はぁ?」
聞き返す俺に、寂しそうな笑みのカメが近寄る。
「もう……無理なのかなとは思ってたんだ。
ごめんね、言えなくて……」
「………おま、消えるって」
「…ごめ、ん…ごめんなさい…ごめんなさい…」
「……」
ただただ悔やみ謝るだけの彼へかける言葉が見つからない。
「ほんとにごめんなさい……
うぅ……もう消えてしまいたい……」
「……はぁ?お前何言いやがるんだよ!
消えるなっていいてぇのに……
消えてぇなんていうなよ……
……もう俺とも会いたくねぇのかよ……
やめてくれよ………」
「………」
無意識に零れる水はきっと汗だ。
焦りでずっとでてたのが流れてきたんだ。
「先輩………?」
「モモタロス……」
「……わりぃ……ちょっと席外す…」
その場から離れるように走って川沿いまでくる。
川原の石を拾い、投げて水切りする。
今日は不調ですぐに落ちた。
あいつにどうしてやればいいのか……
そんなことしか考えられなくて。
いっそのことあいつが消えるより先に消えてしまって、向こうで俺が待っていればいいのにと思う。
ふと水面に俺以外の人物が映った。
青い瞳。俺を追いかけてきたカメだった。
「先輩……ごめんなさい」
「……」
「言い出せなくて……ごめんなさい……」
謝らなくていいのに。
あいつはずっと俺を見て謝る。
やめろ、お前は悪くないんだ。
言い出せない俺はただ唇を噛み締める。
「ごめんなさい、ごめんなさい……」
何かに取り憑かれたように何度も何度も謝る。
「やめろ!」
たった一言しか出せない。
「ひ……ごめんなさい……」
「謝るな!お願いだから……」
泣きながら訴えるのが精一杯。
「ごめ……あ……」
「俺が悪かったんだよ!
お前に気づいてやれなくて……」
「せん、ぱい……」
「……」
「ありがとう……でも、言えなかった僕が……」
何故か次第に薄れゆくカメの姿。
「カメ……」
「大好きだよ……ありがとう」
どんどん消えていく。
つま先はもう見えない。
「カメ、ダメだ……消えるんじゃねぇ……」
「大丈夫だから……もう……」
「だめだ、お前は消えちゃいけねぇ…
俺の前から……消えるな……だめだ……」
震えつつ声を漏らし、カメを抱きしめる。
初めて触ったあの時、感じた冷たさ。
あの時と同じだ。
「最後に、僕に言ってよ……」
「なんだよ……」
「好きって……」
「す、す……す……」
なんでだ、出てこねぇ。
こいつにかけなきゃいけねぇ言葉なのに。
その一言は俺の口の歯で引っかかって出てこない。
なんでだよ、たった一言だ。
「……そっか……そうなんだね…ごめんね…
僕の愛は一方的だったんだね……」
そうじゃないんだ……
俺はこんな時さえ気持ちを言葉にできなくて…
「いいよ、もう無理しないで」
「カメ!やだ……消え………んな……」
「愛してるふりでも嬉しかったから」
「かっ………」
最後に残像で残っていたやつまで消える。
俺はそこにただ一人いた。
空を見る。
雲ひとつない空。
今、俺は何を求めて立っていた?
雨?雲?違う。
愛する人だ。
俺は愛する人を失ったんだ。
あいつに言えなかったあの一言。
あの時言えばよかったのに。
とても悔しくてつらくて。
今から言っても遅い……
「カメ……好き、だった……」
もう喋る気はなくなってしまった。
手も足も力が入らない。
頭もぼーっとしてもう何も出来ない。
ああ、俺はもうこのまま死んでしまう方がいいんじゃないかな。
結局その後一人家に帰りぼーっとしてる。
倒れ込みやる気をなくしたまま眠る。
どれだけ寝ただろうか。
ひどく目覚めの悪い朝だ。
外を見ると暗い。
まだ、夜が明けていないのか。
手足には力が入らず、起き上がることもだるくてやりたくない。
ふと目に入った腕。
ひどく汚いな。
こんなのなくなってしまえばいい。
手元には何も傷つけるようなものがない。
よろよろと立ち上がりナイフをとりにいく。
そうして手にしたナイフでひどく汚く何も出来ない腕を切る。
横に、横に。
何度も、何度も。
綺麗な線がたくさんできる。
これなら汚くなくなる。
ああ、こんなに綺麗になって。
もうこれでいい、満足だ。
一人また眠りにつく。
いつまで寝ていただろうか。
ひどく目覚めの悪い朝だ。
今日は日が差している。
外は晴れていて眩しいようだ。
ああ、日の光など浴びたくない。
カーテンを締め切ろうと腕を上げようとして、腕に異変を感じた。
腕が上がらない。
腕が痛い。とても痛い。
こんなんじゃあ意味が無い。
次第に脱力感に襲われる。
歩くことも面倒になってきた。
ふと足元を見たら、役に立たない太ももが目に入った。
これじゃあ動くのも大変だ。
俺はそんなところにナイフを入れていく。
入れたところから鮮血が飛び散る。
快感だ。喜びだ。楽しみだ。
そして赤く染まる。
ああ、なんていい色だ。
これで役に立つだろう。
そうしてまた一人眠りにつく。
もう何度寝たかわからない。
珍しく気持ちのいい目覚めだ。
ふとあたりを見ていたら、赤にまみれた手足が目に入った。
どうしてこうなったんだっけ。
痛む頭をフル回転させる。
フラッシュバックする痛みと景色。
そうだ、今まで俺はこうして自分に傷をつけて気持ちを落ち着けてきた。
カメに言えなかった後悔。
でもこれ以上何か傷つけても意味が無い。
生きるしかない。
痛みに耐えながら立ち上がり、窓を開けて風を入れ替える。
すごく気持ちよくて心が綺麗になる。
カメがそばにいるように吹き抜けていく。
あの時言えなかったあの言葉。
今でも思い出しその言葉を口に出したくなる。
つらくはない。
それが届くように窓から空に向かって呟く。
「カメ、好きだ……」
言うとなにか返ってくる気がして。
今もまたそんな言葉を呟きながら生きている。
傷も治り、何ヶ月も経ったある日、一人また外を歩いていく。
景色が変わって、外はいろいろなものがある。
美味しそうなご飯の匂いもする。
ただ一人歩いていく。
ふとすれ違う少年。
小さな声が聞こえた。
「先輩に好きになってもらうんだ……」
俺を愛していた彼によく似ていた。
きっと……彼の生まれ変わり……なわけ、ないか。
でも、きっと……
ちょっと新しい人生を歩んでるようで嬉しかった気がした。
今度彼を見かけたら、ちょっと声をかけてみよう。
朝より明るくなった空を見て、すこし遠くにあるひこうき雲に願いをかけた。
「あいつが、今もどこかで元気してますように」
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