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「待っててくれてありがとう。」
そう言いながら由香里は近づいてくる。
やっぱり日向は由香里が苦手だと思った。
「大事な話って何?」
日向が尋ねると由香里はキョトンとした顔をした後、ゆっくりと笑った。
「あぁ。颯太に大事な話があるって言ったんだっけ。・・・別に大した話じゃないんだけどね。」
颯太にはそういった方が何も聞かれないから、と。
「でも話はあるんだろ?」
「まぁね。わかってると思うけど・・・祐斗君どうだった?」
日向はひとつ深呼吸をして話し始めた。
「祐斗には頼んでない。」
「どうして?」
由香里は刺して動揺した様子もなく続きを促す。
「前頼んだ時、祐斗教えられないって言ってた。だからもう一度頼む必要はないと思ったんだ。」
「でもその時断った理由を聞いても答えられなかったよね?私は理由を・・・」
「理由もその時ちゃんと聞いた。」
日向が由香里の言葉を遮って続ける。
「祐斗は自分が知らない人のために動きたくないって言ってた。」
二人の間に沈黙が流れる。
「それだけじゃないくせに・・・」
「え・・・?」
日向は由香里の小さな声を聞き取れなかったが、いつもより声が低くなっていることに気づき驚いて顔を上げる。
そこには今まで見たことがないような目で睨んでいる由香里がいた。
「そっか。じゃあしょうがないね。」
しかしすぐにいつも通りの顔に戻って話し出す。
さっきの顔は見間違いではないかと思うほどいつもと変わらなかった。
「うん。ごめん。」
「私の方こそごめんね。遅くまで引き止めて。」
「いや・・・話し終わったんなら俺帰ってもいい?」
「うん。」
荷物を鞄の中に入れて由香里の横をすり抜ける。
教室を出るとき由香里が振り返って言った。
「あ、でも私諦めないから。またね。」
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