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#7 名前
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ガラッ
突然、教室の扉が開いた。
山岡、帰ってきた!?
俺は大きく振り返った。
でも、そこに立っていたのは俺の待っていた人ではなく、隣のクラスの女子だった。
「あれ?優?……皆川君、優知らない?」
……優って、山岡のことだよな?
「さっき、部活のミーティングがあるって言って出ていったよ。」
「部活かぁ…。それならしょうがないっか。」
「何か伝言しておこっか?」
「ううん、いいの。ありがとうね。」
そう言って、女子生徒は戻っていった。
俺は気づいた。
……今、"優"って、呼んでた…。
山岡は男子よりも女子に人気がある。イケメンだから当たり前のことなのだが。
それでも、俺はその山岡と付き合っている。
そんな俺が、付き合っていない女子に負けたのか。
自分でも馬鹿らしいと思う。
ただ、女子が山岡のことを名前で呼んでいるからって、それを羨ましがり、妬んでしまう。
……俺も、…"優"って、呼びたい…。
付き合っているなら、それぐらいしてもおかしくないはずだ。
「…………優…。」
小さく呟いてみた。
静かな教室に、俺が呟く声が響いた。
「………………優……、……早く、帰ってこないかなぁ…。」
……早く、二人きりで話したいなぁ…………。
「……皆川…?」
背後から声が聞こえて驚いた。見ると、そこには山岡が頭にはてなマークを浮かべたような顔をしながら立っていた。
「おおぉおい!いるなら声掛けろって!びっくりしただろうが。」
「ははは、悪い悪い。……なぁ、今、俺のこと読んでなかったか?」
「ふぇっ!?」
聞こえていなかったことを心の中で願っていたが、それはどうやら叶わなかったらしい。
「な、何でもない…。」
何て言おうものかわからず、適当に誤魔化した。
「…ふぅーん、そっか。……んじゃ、帰ろうぜ。」
「あぁ。」
今日もまた、山岡と帰る。
これがこれからもずっと続けられるのかと思うと、何だか嬉しくなる。
付き合うっていいよな。
好きな人と、ずっっと一緒にいられるんだから…。
俺は、さっき教室で思ったことを、山岡に言ってみようと思う。
「…………なぁ、山岡?」
「ん?」
「……えと、…………名前で呼んでも、いいか?」
「??どうした、急に。」
「べ、別に…。…………ただ、名前で呼び合うのって、いいなぁって思って…。」
俺は何を言ってるんだ。
山岡が困ってるじゃないか。やっぱり言わなきゃよかった…。
そう、俺が後悔したとき。
「別にいいぜ。」
「…えぇ!?」
「なんだよ、皆川が先に言ってきたんだろ。」
「…あ、いや……。てっきり、嫌なのかと思って…。」
「嫌なわけないだろ。……武博。」
ドキッ。
自分で言わせておいて、半端ない羞恥心を感じた。
……やべー、これ…めっちゃクルわ…。
「おーいー。呼び合うんだろ?お前も名前で呼んでくれないのかぁ?」
「あ、そっか…。……じゃあ…。…………ゆ、…優……?」
ボシュッ! (←頭がパンクして煙が上がった音)
んああああ!///
んだこれ!
さっき、教室で一人でいたときは何ともなかったのに、何でこう本人を目の前にすると恥ずかしくなっちまうんだよ…!
俺は恥ずかしさのあまり、山岡と反対の方向を向いて、顔を隠した。
…………最悪……。……俺、かっこ悪…。
「あっはははは!何で疑問形なんだよ。つか、照れんなよ!こっちまで恥ずかしいじゃねぇかよー。」
山岡は、笑い飛ばしてくれた。
そして、俺の頭を上からガシっと掴むと、わしゃわしゃと撫で回した。
それが余計に恥ずかしく感じさせたが、その恥ずかしさも心地よかった。
「あ、なぁ!この先にある店で、スイーツが美味い店があるんだけど、行かね?」
「す、スイーツぅ?…お前は女子か!」
「いーじゃんかよー。オープン記念で、一品だけ無料なんだとよ!」
「無料!?それは行くっきゃねぇな。」
「だろ~!…早く行こうぜ、武博!」
……名前で、呼んでくれた…。
……あーもう…。
…………こういうさりげないところが、優のいいところなんだよな…。
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