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#8
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最近、俺は優とよくいるようになった。
昼食を一緒にする。放課後一緒に帰る。一緒に勉強をする。休日も二人で会う。
当たり前だが、もう優のことを名前で呼んでも恥ずかしくない。
以前もそれなりに仲が良かったが、今では俺たちの関係を知っている者がいるならば、ラブラブなカップルに見えるほどだ。
まぁ、俺たちが付き合っていることなんて、まだ誰も知らないのだが。
……男同士の付き合いなんて、他人に公表してもいいのだろうか。
世間ではあまり認められていないはずだ。
なら、俺だけならまだしも、優のイメージが悪くなってしまう。
…言わない方が賢明か…。
別に、誰かに言いたいって訳でもないのだが。
少しだけ、優は俺のものだって、自慢したい気持ちもあった。
ヴヴゥ…ヴヴゥ…
握っていたケータイが鳴った。
開くと、画面には一言 『優』、と書かれてある。
…………優とこうして連絡が取れることが、俺にとっては夢みたいなものだった。
先日、やっと忘れていたケー番を聞き、今なら誰しもが使っているSNSのチャットアプリで会話が出来るようになった。
俺と優は、しばらく前から会話をしている。
内容なんて、どうでもいい他愛のないこと。それがむしろ嬉しくて楽しかった。
【なぁ、この間行ったケーキ屋、またセールするんだってよ!今度の土曜から2週間なんだけど、暇なら一緒に行かないか?】
この間行ったケーキ屋?
あぁ、名前で呼ぶことになった日に行った店か。
優からの誘いだ。俺が断るわけがない。
俺はすぐに返信を送った。
【行きたい!!なら、来週の日曜とかは?】
【俺もその日空いてる!じゃあその日で決定だな!】
早々と来週の日の予定が埋まった。
俺は、予定が埋まった今日のこの瞬間から、来週の日曜という遠い日が楽しみで仕方なくなった。
そして迎えた日曜日。
スイーツ店というだけあって、客は女性が多かった。カップルもちらほらと見られるのだが、男同士の客は俺ら以外見られなかった。
そのせいか、他の客からヒソヒソと小声を立てられ、よろしくない目で見られた。
……男同士って、そんなに悪いものなのか…?
…………優も、本当はこんな店に男の俺となんか、来たくなかったんじゃないのかな…。
ちらっと前の席に座っている優を見た。
優は、他の客など気にせず、メニュー表に釘付けだった。まるで、他の客の声や視線なんて気づいていないかのように。
「……な、なぁ…優。…………やっぱり、俺なんかより、他の女子と来た方がよかったんじゃないのか…?」
「え?何で。」
「だ、だって…。…女の客ばっかりで、男同士で来てる客なんて全然いないから、俺ら変に浮いてるし…。……何か、空気が悪いっていうか…。」
「嘘っ、武博…気分悪いのか!?」
「だ、だから!!……そうじゃなくて…。…………優は、俺とこの店にいて、嫌じゃないか…?」
俺が渋々優に問うと、優は「何を言ってるんだ」とでも言いたそうな顔で答えた。
「俺が武博を誘ったんだけど?俺が武博といて、嫌だなんて思うわけないって!」
胸がキュウウっと鳴った気がした。
俺は小さく、「そうだな」とだけ答えて、優と一緒にメニュー表を眺めた。
…………優のその言葉は…。
…俺と一緒にいられて嬉しいっていう意味だと思っても、いいのかな…。
……優。…俺、自惚れてもいいのかな…?
冷房の効いた店内で、俺の顔は、ほんのりと熱を放っているように感じた。
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