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#30 晴れのち大雨
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俺が男たちに襲われてから、1ヶ月近くが経った。
その間に、優とたくさんの思い出を作った。
文化祭っていうのもあるけど、それ以外にもたくさん。
俺と優が行ったあのケーキ屋は、俺たちのお馴染みの店となり、2人で何度も行った。
一緒に勉強したり、外食に行ったり、少し他県まで遠出したりもした。
俺にとっては、どれも幸せな思い出だった。
でも、優は違うようだった。
優はやっぱり、俺との思い出を全然覚えていなかった。
…むしろ、一緒にデートに行ったときの記憶は、何1つとして覚えていたこてはなかった。
自分が誘ったことなのに、誘ったときから行って帰ってくるまでの全ての行程を忘れていた。
休日に一緒に出掛けても、週の始めに学校で会ったときにはもうすっかり記憶から抜けている。
前日に出掛けたことさえも忘れていることも、何度もあった。
優はそれを、ボケてきたからだとか昔からよくあったんだよな、と言って誤魔化していた。
でも、俺にはそれはただのボケじゃないと思っている。
老人のように、自分の家に帰れないというわけではない。
ちゃんと勉強も出来るし、部活も活発にやっている。
何かの病気という風には思えなかった。
そして何より、優が忘れている記憶は全て、学校外で俺と二人きりだったときのものしかない。
俺と2人きりで出掛けたときの記憶はないのに、他の友達と遊んだりしていたときの記憶はちゃんと残っている。
なくなっているのは、俺と2人きりだったときのことだけ。
………何で俺とのことだけ、忘れてしまっているんだ…。
俺は、どうしてもそれが許せなかった。
…どうして……、俺だけ………。
悔しくて、とても悲しかった…。
ヴヴゥ…、ヴヴゥ…
ベッドに置いていたケータイが鳴った。
優からだった。
画面を開くと、今日午後から家に来ないか、という誘いのメッセージが写真付きで届いていた。
<この間、新作のゲーム買ったんだ!>8:20
<今日の午後、俺ん家で一緒にやらないか?>8:21
写真を見ると、俺と優の好きなバトルゲームの最新作のパッケージが写っていた。
今の今まで、優が俺との出来事を忘れてしまうということを考えていたせいで、すぐには返事を送れなかったが、結局俺は優の家に行くことにした。
…どうせ、家にいても暇だしな。
俺は昼を食べてから、自転車に乗って優の家まで向かった。
この一ヶ月で何度も優の家に行って、道は完璧に覚えた。
その道のりを、俺は爽やかな風を受けながら走った。
━━━━このとき、行かなければよかったのかもしれない。
引き返せば、俺たちがあんなことになることはなかったのかもしれない。
俺たちの人生を変えたのは、この日だった。
今日は、10月30日。
……今日の天気は、晴れのち…大雨。
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