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#41
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『……なぁ、優。』
『ん?』
『優はさ、俺に付き合ってる人がいるの知ってるか?』
『え!知らない!誰!?どんな子!?』
『……優だよ…。』
『は?何言ってんだよ、武博。』
『……優は、俺が優に告白したの、覚えてない?』
『うっそだー!俺、武博に告白されたことなんかねぇよ。』
『違う。俺は、ちゃんと優に好きって言った。…………優は?……優は、俺のことをどう思ってる?』
『俺は、武博のことは大事な奴だと思ってるよ?』
『…………大事なって…?』
『友達だろ、俺とお前は!なっ?』
『違うだろ!?優が忘れてるだけなんだよな!?本当に、俺は優と付き合ってるよな!?』
『そんなことないだろ?そもそも、俺もお前も男だろ?俺には、男と付き合う趣味なんかねぇよ。…じゃあな。』
『ま、待って、優!待てって…!』
『…ホモは俺、ムリだから。』
『行くな…、行かないでくれ…、やだ…、ダメだ…、優ッッ!』
『…………俺は武博のことなんて、好きじゃないよ。』
『ゆぅううううううううッッ!!!!!』
「おい!タケッ!?」
体が大きく揺さぶられ、俺は目が覚めた。
気付くと、目の前には心配そうに俺の顔を見つめる明良がいた。
「…はぁ、…はぁ、…ぁ、……明良…?」
「…タケ、大丈夫か…?酷く魘されてたけど…。……てか、汗ヤバイって!」
慌てている明良を見て驚き、自分の顔に手を当ててみると、汗が滝のように流れていた。
腕を枕にして伏せていたから、その腕にもべっとりと汗がついていた。
…………夢、か…。
………………やな夢……。
「マジで大丈夫か…?顔色良くないし、保健室に行ったほうがいいんじゃないのか?」
「…いや、…いいよ…。…はぁ、っはぁ…!………すぐ治る…。」
昨日は優のことをいろいろ考えていて、一睡も出来なかった。
そのせいで、今日は朝から授業も休み時間も動く気力がなく、だらけていた。
考えれば考えるだけ良くないことばかりが浮かび、それを嘘だと否定して、どうしようもない怒りと悲しみを溜めてしまったように感じた。
今の夢も、俺が考えすぎていたからだろう。
…………大丈夫。
他のことに集中すればいいんだ…。
保健室になんて行ったら、静かで何もしていないから、余計にいろいろと考えてしまいそうだ。
俺はタオルで汗を拭い、精一杯の笑顔を作った。
「大丈夫!…悪いな、心配掛けたみたいで。」
「いや、全然いいんだけど…。…何があったんだ?」
「…………何もないよ。」
心配してくれる明良に、何も話せない。
話したほうがラクになれるんだろうし、明良も優と仲良しだから、知っていてもいい話かもしれない。
でも、たとえ香織さんに明良にこのことを伝えろと言われても、俺にはあんな残酷なこと、言えるわけがない。
ある意味、昨日の香織さんとの会話は、メッセージでの会話でよかったのかもしれない。
男のクセにあんなに涙を流して泣いて、感情の高ぶりに合わせて荒ぶっているところを誰かに見られるなんてこと出来やしない。
……ヤバイ…、また、泣きそう…。
瞼が熱くなったのを感じた。
両手で顔を覆い、瞼を強く瞑った。
「…………武博、大丈夫か?」
「…ッッッ!!!」
ガタッ…!ドシッ…
「…え、ちょ、タケ!?」
ドクンドクンドクンドクン…!
…優…………?
……これは、優…だよな…?
いきなり優の声が聞こえて、しかも俺のことを呼んだから、俺は驚きのあまり、椅子から落ちてしまった。
優も明良も、驚きと不安が混ざったような表情をしていた。
俺はそんな2人を直視出来ず、荒く鳴っている胸を押さえた。
「…タケ、本当に大丈夫か…?」
「武博、今日らしくないぞ?…ほら、立てるか?」
優が俺の腕を掴んで、立たせようとしてくれた。
優しい…。
優しい優。
…………でも。
「…やめろ…ッッ!」
俺は掴まれた腕を大きく振り払った。
「…あ、……ごめん…。」
優が悲しそうに表情を暗くさせた。
…違う。……違うんだよ、優…。
そう思っても、俺は何も言えなかった。
「…ごめん、ちょっと風邪っぽいんだ……。…移ると悪いだろ?…………だから、今日はあんま近づかないで…。」
いつも言う言葉とは、正反対の言葉を言うのがこれほどに辛いとは思わなかった。
優は、「そうか」と一言言うと、自分の席へ戻っていった。
…………ごめん、優…。
……どうすればいいんだよ…。
何で俺は、優しい優にいつも通りにしてやれないんだよ…。
ズキッ…
胸が締め付けられるように痛くて仕方がなかった。
苦しみを止めたくて、ワイシャツの胸元を掴んだ。
掴んだ手は、いつになく震えていた。
…………何で、こんなに胸が痛いんだよ…ッ!
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