アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
#43
-
体を大きく揺さぶられ、顔の近くで俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。
重い瞼を開けると、うっすらと俺と同じ制服を着た奴が見えた。明良が来たのかと思い、ボヤけて見える相手の顔に手を伸ばそうとした。でも、体が重くて動けない。
関節の節々がキシキシと痛んだ。
すると、そいつは俺のことをそっと抱き締めた。
何だか、懐かしい匂いがした。
「…あ、きら……?」
「……………そうだよ?」
意識が朦朧として上手く話せない。まともに目が開かない。
「…無理して起きないで、目閉じてろ…。……熱ヤバイじゃん…。何でこんなところで寝てるんだよ。」
明良は自分の手で、俺の目を隠した。
俺は明良が来てくれて安心して、再び目を閉じた。
「………タケ。…………俺は、明良だよ?」
「…うん。……明良だろ…?」
「……そうだよ。……明良だよ……。」
「………わかるって…。……どうしたんだよ…。」
「……………………何でもない。…………部屋行くぞ。連れてってやるから寝てろ。」
明良はそう言って、俺を抱き抱えたまま2階へ上がった。
そして部屋に入ると、俺をそっとベッドに下ろしてくれた。
「…ごめん、ありがとう……。」
「いいって。…てかタケ。何も食べてないんだろ?薬は飲んだのか?」
「……飲んでない…。……寝てれば治るだろ…。」
「バカか、お前は。……キッチン借りるぞ。お前の好きなオニオンスープ作ってやるよ。薬も買ってきてやったから、それも飲め。」
「…………悪いな。」
「……ちょっと待ってろ。すぐ作ってやるから。」
そう言い、明良は部屋を出ていってしまった。
明良が来てくれたから、1人でいることの寂しさも少し紛れたのに、また1人になってしまい、さっきよりも寂しさが大きくなった気がした。
明良には悪いけど、本当なら俺はあいつにも来てほしかった。
…………優…。
……………………会いたいよ…………。
ここしばらく優を避けていて、まともに優を見てないし話してもいない。
全部俺がやっていたことだけど、そうしなきゃ、俺は優を傷つけてしまうと思ったんだ。
……優、ごめんな……。
…………優じゃないんだよ。
……俺は、優を信じるって決めてたのに、結局話を聞いたら俺が優のことを信じられなくて、現実から逃げたことが許せないんだよ…。
…………優……。
………………ごめんって、言いたい…………。
俺はいてもたってもいられなくなり、ベッドを出た。そして、1階へ行こうと階段をゆっくりと下りた。
でも、ふらついて足元が曖昧になっていたため、最後の2段ほどを踏み外してしまった。
ダダダッ
「…あぁッ!」
……俺、今日はよく倒れるな…。
「……タケ?……タケ、どうし…、タケ!?」
驚いた明良が掛けよってきてくれた。でも、俺は自分の顔を見られたくなくて、横になってうずくまり、腕で顔を隠した。
「…………タケ……?…………泣いてるのか……?」
俺は小さく頷いた。
そのまま俺は、自分の気持ちを素直に吐いた。
「……俺、…………優のこと大切にしたいんだよ……。」
「…………優?」
「…………ん。…………俺は、優がいなきゃヤなんだよ…。……なのに、俺は、優を傷つけた……!
悪いのは、優じゃないんだよ…。優じゃないのに、俺は優を避けて…!
…悪いのは、俺なのに…!
……優も……、…………光も被害者なのに…………!
…………俺は、誰よりもわかってるはずなのに…ッ!」
「……タケ。…………ちょっと黙ってろ。」
明良が、俺の声を遮った。
「…………わかったから、もう寝ろって…。」
「…でも…。」
「………薬飲んで寝ろって。…………熱のせいで変になってるんだよ。………寝て、風邪が治ったら、今の優に言ってやれよ。…………スープ出来たから、ちょっと食べたら薬飲め。」
「……わかった……。」
「1人で部屋戻れるか?」
「…………大丈夫。」
「……よし。じゃあ先行ってろ。」
俺は涙を拭い、立ち上がった。そして部屋に戻り、毛布を頭から被った。
…ズキズキ…ジンジン…ガンガン…
体全身のいろいろなところが痛んだ。
頭が痛い。喉が痛い。
…………胸が痛い…。
俺は静かに、気づかないうちに枕と布団を濡らしてしまった。
「…………タケ……。」
「……あ、…明良ぁ…。…ぅ、うぅ…!」
「……………………風邪のせいか?…………こんなに弱ってるお前、見たことないぞ…。」
布団の上から、明良がポンッと俺の頭に手を乗せ、静かに撫でてくれた、
その明良の優しさが胸に染みて、更にヒリヒリと痛んだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
44 / 162