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#55
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俺は頭を抱えるしかなかった。
もう俺の中には、後悔することしかない。
あのときの自分を悔やんでばかりだった。
全て俺の間違い。
あんなことを言わなければ。知らなければ。
…………………俺はもう、優と…。
………………………あいつらといられない……。
……俺はあいつらを、傷付けた………………。
「………タケ。」
明良が小さい声で言った。
「……お前は、優と光のことを知っても、ずっと一緒にいたかったんだろ?」
俺は黙ったまま大きく頷いた。
「……そんなに後悔しても、まだ光の気持ちはわかんない?」
「………それ、どういうこと?」
「……………。」
明良は黙り込んでしまった。
でもすぐに口を開いた。
「……………じゃあさ、俺の知っててタケの知らないこと、教えてあげようか。」
「………何。それ…。」
ドクンドクン…
荒々しく鳴る鼓動が邪魔をする中。明良の声は妙に大きく俺の耳に届いた。
「………タケ、この間熱出て学校休んだだろ?」
「…あぁ。」
「そのとき俺が電話して、見舞いに行くって言っただろ?」
「…あぁ。それで、明良が家に来て、オニオンスープ作ってくれたんだろ…?……それがどうしたんだよ…。」
「……………その見舞いに行ったの、俺じゃないって言ったらどうする?」
━━━━━━は…?
明良が俺ん家に来たんじゃなかったのか……?
「……そ、そんなバカな…。」
「…嘘だって思うだろ?……でも、……嘘じゃない。」
…………………ちょっと待て…、それって…!
「…あの日、俺はお前の家に見舞いになんて行ってない。…本当に行ったのは、………………………優だよ……。」
「…………………………………………………嘘だろ……?」
「……こんな嘘言わねぇよ…。
………本当は、俺が行くつもりだったんだ。…でも、放課後に…、タケの家に行く前に顧問に呼び出し食らって…。
……そんとき、偶然優に会って……。
………………あいつ、言ってた…。
━━『武博に何かあったのか?しばらく俺避けられてたみたいだから、ちゃんと会って話したい。』
━━『明良が行けないなら、俺が行く。俺が、武博を助けに行く』
……そう言ってタケん家どこだって問い詰めてきてさ…。
…………………そんときの俺はまだ光って奴のこと知らなかったから、あれは優だったんだって思うしかなかったんだけど。
………………………今思えば、あれは優じゃなかった気がする…。」
……………………………………優じゃなかった……?
「………あれは、タケから聞いた、″光″って奴のほうだったと思う……。」
……目の前が、頭の中が真っ白になったような、体がフワフワした気分に陥った。
「………タケが言ってた、耳に髪を掛けるってやつ…。優が偶然したのかもだけど、……やってたし……。………俺も、優に思えなかったっつーか…。」
…………………ヤバイ、どうしよう……。
……俺、言ったのか……?
「…………………………だから、タケのことを看病してくれたのは、光だって思ってほしい……。」
………………………あいつに……。
━━━━━━━━━━━━━━……
俺は家に帰ってから、すぐにベッドに横になり、ただひたすら天井の定まらない一点を見つめながら、さっきの明良の話を思い出していた。
…………………俺の見舞いに来てくれたのは、……本当に光だったのか……?
……明良がああ言っただけで、優っていう可能性だってある…。
………………………でも、あいつは大切なときに現れる。
……光がいたときなんて、全部俺と2人きりのときで…。
俺とのデートのときとか、旅行とか……。
…………………じゃあ、俺が風邪引いたっていうのは、光が現れるほどのことってことか…?
……そもそも、香織さんに会った日に、家に呼んでくれたのも光ってことだろ?
………………………光は、何がしたいんだよ……。
……意味わかんね………。
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