アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
#66
-
「…タケ、どうすんだよ…、光、止めなきゃだろッ!?」
隣の明良が俺の体を揺さぶりながら言う。
だけど、俺にもどうしたらいいのかわからない。
…正直、驚きと不安で、俺の足は固まってしまっていた。
「…さっきの言葉、撤回しろよ…、なかったことにしろ!じゃねぇと許さねぇぞッ!」
光が先生たちに押さえ付けられながら2人の男子生徒に言う。
俺たちは今教室に来たばかりで、この喧嘩の原因が何かよくわかっていない。
すると、教室の隅にいた級長が話してくれた。
「…あの2人が、皆川君の悪口を言ったの。……それで、それを聞いてた山岡君が怒って……。」
「…え、俺!?」
そういえば、さっき教室に入ってきたとき、光が俺の名前を呼んでいたのを思い出した。
「……何て悪口を言ったんだ?」
「………………ん……。」
級長が言いにくいとでも言うように口を籠らせた。
そして、小さな声で話してくれた。
「…………………皆川君が山岡君と付き合ってて、2人はゲイだ…、って………。」
俺の頭が真っ白になった。
………え……。
俺と優が付き合ってたっていうことがバレてた……?
誰かに見られてた……?
様々な思考に駆られ、冷や汗が流れる。
明良も何も言わなかったものの、心配そうに俺の顔を覗いてきた。
………どうすればいいんだよ……。
目を固く瞑り、歯を食い縛る。
胸が張り裂けそうなくらい、ビキビキと痛んだ。
そんな中、光たちの喧嘩は続いていた。
「…んだよ…。…本当のことだろうが……。本当のことを言われて何も言い訳が出来ねぇんだろ!」
「ちげぇ!俺たちが付き合ってるわけねぇだろうが!! 勝手なこと言ってるんじゃねぇ!」
「嘘言うなよ…知ってるんだぜ、お前らが一緒に帰って、抱き合ってるってこと!」
「はぁッ!?付き合ってなくてもそういうことぐらいしてフツーじゃねぇかよ!…てめぇ、武博のことバカにしてんのか!?」
「だから、それをフツーにしてるってことがキモいって言ってんだよ、日本語通じてんのか?」
「大事な奴を大事に思うことがフツーじゃねぇってか!?」
「皆川にそういう感情を持ってるってことがキモいっつーの。お前も皆川も、2人ともゲイなんだろ…?隠してんじゃねぇよ。」
「だからちげぇっつってんだろーが!!……いい加減にしろよ…、俺だけじゃなくて、武博のこともバカにするっつーのかよ……。」
「本当のこと言って何が悪い。…皆川の肩を持つってことは、お前やっぱ皆川のことが好きなんじゃん!」
「まじで殴っぞてめぇ!大事なダチを守るのに、ゲイもクソもあっか!!」
…………光…。
俺の目にじんわりと涙が滲んだ。
光は、自分が言ったことをちゃんと守っていた。
俺の前にはもう2度と現れないと言った。
でも、光はまた現れてくれた。
光はきっと、頭に血が上っていて俺が来たことに気付いていないんだろう。
だからこそ、光はとても優しい。
自分からもう現れないと言ったのに、また現れて怒ってくれた。
………俺と優のことを守るために…。
乱暴で怖い奴だけど、その優しさは人一倍だった。
大声で俺と優の付き合いを否定する。
俺が付き合っていたのは、優に見える光。
…また、自分を否定する言葉……。
俺は何度光に、自分の存在を否定する言葉を言わせるのだろうか…。
………これ以上、光も優も傷つけたくない……!
『キャアァァーッッッ!!!』
そう心に決めた瞬間、光が側にあった机を持ち上げた。
廊下から教室内を見ていた他の生徒が悲鳴を上げた。
堪忍袋の緒が切れたのか、光が暴れ出そうとしていた。
そして、持っていた机を力の限り男子へ向けて投げつけた。
「ゆ、優…ッ!……やめろぉッッ!!」
叫んだのは、明良だった。
でも俺は、その声よりも早くその場から飛び出し、光と男子との間に入っていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
67 / 162