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#69
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1度家に戻り、財布と保険証を持って、再び先生の車に揺られながら病院へ向かった。
その間。車に揺られながら窓の外を見る。
窓の外を見ているはずなのに、頭の中ではさっきまでの光の言葉が鮮明に思い出され、響いていた。
━━ 『ちげぇ!俺たちが付き合ってるわけねぇだろうが!! 勝手なこと言ってるんじゃねぇ!』
━━ 『はぁッ!?付き合ってなくてもそういうことぐらいしてフツーじゃねぇかよ!…てめぇ、武博のことバカにしてんのか!?』
━━ 『大事な奴を守ることがフツーじゃねぇってか!?』
━━ 『だからちげぇっつってんだろーが!!……いい加減にしろよ…、俺だけじゃなくて、武博のこともバカにするっつーのかよ……。』
━━ 『まじで殴っぞてめぇ!大事なダチを守るのに、ゲイもクソもあっか!!』
荒い言葉。だけど、優しい意味を持っている。
本当の光の姿は、さっきまでの姿。
本当に、あれは誰も止められなかった。
先生2人掛かりでも止められなかった。
俺の声も、届かなかった。
……あれが、光。
………あれが、優が内に秘めていた感情の表れ。
胸が締め付けられて、切なくなる。
今あいつがいることは、過去のあいつがこれ以上はムリだっていうくらい傷ついた証拠。
誰も、優を助けられなかったから。
……きっと、俺にも無理だっただろう。
そう思うと泣きたくなる。
俺は唇を噛みしめ、涙を必死に堪えた。
病院での診察では、肩を打撲したと言われた。
痛み止め等の複数の薬を貰い、普段学校が終わる時間の2時間ほど前に家に帰った。
家に帰るとすぐに部屋着に着替え、ベッドに横になった。
医者には安静にしていれば2週間ほどで治るらしい。しばらくベッドでくつろぐことにした。
寝ようかと思ったが、まだ頭が混乱していてなかなか寝付けなかった。
当たり前と言えば当たり前だ。
深く溜め息を吐き、病院でかなり充電の減ったケータイに手を伸ばした。
スクロールを繰り返し、チャットアプリでメッセージを送ろうと選択した相手は、明良だ。
あのあと、優と光はどうなったのか気になった。
おそらく、先生たちに連れて行かれた後は、進路指導の先生たちに話を聞かれたのだろう。
その後は?
[優、あのあとどうなった?先生たちから、何か聞いたか?]
送ったものの、明良の既読がつくのか怖くなって急いでケータイを閉じた。
でも、明良の返事は俺の願ったようにはいかず、メッセージを送ってから1分後くらいに送られてきた。
<まだ何も聞いてないんだ>
<何かわかったらすぐに連絡するよ>
[ありがとう、頼む]
[ていうか、今授業中じゃないのか?]
<なんか、学年のほとんどの先生たちが優たちのことで呼ばれたみたいで一応自習になったんだけど、みんなさっきのことでいろいろ騒いでる>
<別に、悪い意味じゃなくてな>
<みんな、言った男子たちが悪いって言ってる>
<俺も友達にそう伝えたし、女子は江口さんがちゃんと話してくれたんだと思う>
<感謝しなきゃな>
[そうだな]
[ごめんな、いろいろと俺らのことで迷惑掛けたみたいで]
<何言ってんだよ、ばかか>
<それより、タケのほうは病院何て言われたんだ?>
[肩の打撲だって]
[1、2週間で治るみたい]
<おー、よかったな!体育は休むけど、学校には来れるんだろ?>
[もちろん!]
[でも、なんか教室に入りにくいかも。。]
<大丈夫だって!みんなあんな噂信じてないみたいだし、なんか言われたら俺が言い返してやるからさ!>
[喧嘩にだけは、もうなりたくない]
[大丈夫だよ、俺だってちゃんと言って返せる]
<そっか>
<じゃー、また連絡するな>
そう言って、明良との会話は終わった。
そして次の日、俺は教室に入るのを躊躇っていたが、実際明良の言うように俺の想像とは 正反対だった。
クラスメイトは昨日のことはなかったことのように、ふつう通りに過ごしていて、あの騒動を起こした原因の男子たちが、俺の元に謝りに来た。
江口さんにありがとうを伝えると、周りにいた女子たちにも励まされた。
このクラスの人たちは、みんなが優しかった。
━━でも、現実は優しくなかった。
HRの時間。担任は言いにくそうに、でも言わなくてはいけないことを俺たちに伝えた。
「えー…。……昨日喧嘩になった山岡だが…。……昨日の会議の結果、山岡は1週間の停学になった。」
…………………優が、停学…ッ?
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