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#82
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「…………………………俺の…、せぃだ…………。」
俺は腕で目を隠し壁に寄りかかるようにして、その場にしゃがみこんだ。
「…………。」
「……た、タケ…………。」
惨めに見えることは重々承知だった。
それでも、俺は溢れて止まらない涙を拭うことに精一杯で、上手く話せない。
息が苦しい。
でも俺は謝り続けた。
「…ごめ、なさい…、ごめんなさい…。……俺のせいで、優が…ッ。」
もう2人のことを見れなかった。
両手で顔を覆いながら、俺のことを見つめる香織さんと明良に、漏れていく本音をぶつけた。
「……俺が、話さなかったらよかったんだ…。
…話したら、優が苦しむことも…、光が嫌だって思うこともわかってた…。
……それなのに、俺は勝手に、話し続けて…ッ。」
こんな俺が情けなくて、申し訳なくて、苦しくて、悔しくて…。
それでも、俺の口は止まらなかった。
「………俺が話したから、優が苦しんだ…。……それに、光も俺は傷つけた……!」
「…タケ、お前のせいじゃないよ…。……運が悪かっただけだよ…。」
「……それでも!…俺がやったから、こんなことになったんだ…!」
……そうだよ、全部俺のせい…。
…俺が、優に話した。
これが正しいことだと信じてたのに、間違ってたことだったんだ…。
それに気付かず、俺はいけないことをしてしまった…!
……それに、俺はもう1人…。
………光のことも傷つけた……。
俺のことを俺の以上に大切に思ってくれていた光を、俺は最低な言葉をぶつけて、優しさをズタズタに引き裂いた。
『言葉は刃物』っていう意味がわかったような気がした。
見えない刃物で見えない傷を負わせた。
……それが原因で招いた結果がこれかよ…。
………俺が、2人を傷つけた。そのせいで、優の体からは2人分の記憶が抜けてしまった。
……優が優じゃ、なくなってしまった…。
……光が光じゃ、なくなってしまった…。
………2人が、いなくなってしまった………。
……………俺のせい、で…。
━━━━━ もう、ムリだ……。
「……………れ、……やめる…。」
「…ぇ?…………タケ、……今、何て…。」
「…………………………俺、もう優と光には会わない…………。」
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