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#85
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俺が決意を告げ、3人の間に漂う空気がひどく重苦しく感じられた。
その空気へと変えたのは俺自身だ。
それなのに、俺がそれに耐えられなかった。
俺は黙ったまま立ち上がり、頬に残る涙の跡をゴシゴシと制服の袖で擦った。
そして、2人を置いて白い床をゆっくりと踏み締めた。
……もう、ここには来れない。
…優たちにちゃんと顔を合わせることもない………。
…………ごめんな、優…、光……。
…幸せに出来なくて……。
そう心の中で謝り、優の病室前を過ぎようとしていたとき。
「………お前、…もう俺に会いに来てくれねぇの……?」
声が聞こえた。
それは自分の病室前で扉に寄り掛かりながら俺のことを見つめている、優の声だった。
俺も、おそらく明良と香織さんもおどろいた顔をしているだろう。
そして香織さんは勝手に病室を出た優のことを怒っていた。
「優…!…中で待っててって言ったじゃない!」
「………………。」
香織さんが優の腕を掴んで病室の中へ連れ戻そうとした。
でも優は真っ直ぐに俺を見つめたまま瞳を逸らさず、真剣な表情のまま香織さんの腕を振り払い、俺に近づいた。
なのに俺は優が近づいてきた分、後ろに下がってしまう。
そんな俺の腕を、優が逃がさないとでも言うように、掴んだ。
「………ゆ、優…。」
真剣な表情、仮にも昨日まで意識がなかった病人とは思えないくらい強い腕の力に驚き、たじろいでしまう。
それが怖くなって、思わず下を向いてしまう俺。
そんな俺に、優が小さく呟きかけた。
「………お前、もう来てくれねぇの…?もう、俺に会ってくれないのか…?」
″本当は、そんなことしたくない″
その思いが強くて、返事が出来なくなる。頷くことさえ出来ない。
1度止まった涙も、これをきっかけに再び溢れ出そうになる。
自分でも、何でこんなことをしなくてはいけないのかわからない。
本当は、ずっと優たちの側にいたい。側で支えてやりたい。
でも、俺にはそんな力はない。
逆に傷つけることしか出来なくて。
…自分が虚しい……。
そんな俺の気持ちが伝わっているのか、優が俺の胸に刃物を刺すくらいの威力のある言葉を突きつけた。
「………………お前、俺の友達だったんじゃなかったのか…?」
「………ぁ………ッ。」
堪えていた涙腺から、ぶわぁっと涙が溢れた。
顔を上げると、目の前にはいつの間にか不安そうな、悲しそうな表情を見せている優がいた。
伝えられない。
伝えてやることが出来ない。
けど、俺はその気持ちを噛み締めた。
………そうだよ…、そうだよ………。
……………大事な友達だよ…。…それは今でも変わらない……。
…それに、………………″恋人″でもあったよ………。
俺のせいで壊れてしまったけど。
それでも、俺とお前は…。
………………確かに、″愛し合っている″関係だったよ……。
悔しくて、悔しすぎて…、俺はその場に膝をつけた。
床にポタポタと俺の涙が垂れて、床を濡らしていく。
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