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#93
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「「おじゃましまーす!」」
俺と優は、元気よく扉を開けて中へ入った。
出迎えてくれたのは、かなり久しぶりに見た、私服姿の明良だった。
俺たちは今日、明良の家に遊びに来ている。
目的は、当たり前だが、優の記憶を取り戻す為。
その為に、明良の家に来て優が写っている写真を見ようという話になったのだ。
「上がって上がって。先に部屋行ってて。飲み物持ってくから。」
「りょーかい。」
俺自身、久しぶりに明良の家に入った。
去年も今年も、明良が部活で忙がしかったから、なかなか一緒に遊ぶという機会を作れず、家に遊びに来るということも出来なかった。
よくよく考えてみれば、最後に明良の家に入ったのは、もう2年も前になるのかもしれない。
優はとても楽しそうに、わくわくしているのが見てわかった。
だが、俺もそんな優と同じくらいわくわくしていた。
部屋に入り、久しぶりの明良の部屋を見回っていると、明良が暖かいミルクティーを持って来てくれた。
そして、一口それを飲む。
「…ぷはぁー…。……あったけぇ…。」
「外寒かったもんな。」
「ほんとなー。……で、今日はアルバムを見せてくれるんだろ!?」
「おー、そうそう。…何?優、楽しみなの?」
明良が聞くと、優はにへらと子供のような笑顔を見せて言った。
「そりゃー、楽しみだよ!俺も明良も武博も写ってんだろ!?どんなだったか見たいもん!」
俺も明良も、その言葉で寒かった心に少しだけ暖かい日差しが当たったように感じ、自然と頬が緩んだ。
「…よし、じゃーまずは、去年のやつな! 」
そう言って、明良は厚いアルバムをテーブルの上にどんと置いた、
開けてみると、1番最初のページからたくさんの写真が貼られていて、他の重なっているページは大量の写真で盛り上がっていた、
「…写真多いな。これ全部明良の写真なのか?」
「いや、俺がいないやつもあるんじゃないか?…母さん、部活の大会のときの写真とかたくさん撮るんだよ。だから、俺がいなくてチームメイトしか写ってないやつも多いと思うぞ?」
「へぇ…。お前のお母さんすげぇな。俺ん家、学校行事の写真さえねぇよ。」
俺と明良が話していると、いつの間にか優が黙ったまま写真を見つめ続けていることに気付いた。
何だか変に真剣な目で、一心不乱にこの大量の写真を見続けていた。
「……ゆーう。…何か気になるのある?」
「え…、あ、ううん。……そうじゃなくて…。」
「…ん?」
「…………俺、こんなに楽しそうにしてたのに、本当にそれを全部忘れちゃったんだな、って思って…。」
さっきまでの楽しそうにしていた優はどこかへ行ってしまったようだった。
見つめる目が寂しそうで、話している声も徐々に小さくなっていった。
俺はそんな優の背中を、文字通りそっと押した。
「…そんな悲しそうにすんなよ。……これから思い出すんだろ、今日はその為に明良ん家に来たんだから。」
優は小さくふっと優しく笑ってくれた。
それを確認した明良が、アルバムのページを1枚ずつ捲った。
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