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#96
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俺が明良に写真を見せると、明良は自分も思い出した、とでも言うように目を見開いた。
「あー!あったな、そんなの!…あんときはめっちゃ楽しかったよな!」
「な!…8人だっけ?その人数で店に行ってすんごい騒いでさ!店の人とか他の客にめっちゃ見られたよな!」
「あっははは!そうだったそうだった!!…楽しかったなぁ…、またみんなで行きたいな!」
「だな!」
俺と明良が思い出話に華を咲かせていたせいで、優がとても真剣に写真を見つめていることに気付かなかった。
しばらく話していると、明良は1階へ降りていった。
話に一段落がつき、改めて 優を見ると、そこでやっと優が真剣そのものの表情でケータイの写真を見つめていることに気付いた。
「……どうした?ガン見しすぎたぞ?」
「…………。」
返事がない。
そして、俺のその言葉には答えずに話す。
「…なぁ、…他の写真も見ていい?」
「ん?あぁ、いいよ。…左に進むと他の文化祭の写真で、右に進むと球技大会の写真だよ。」
そう言うと、優は何も言わずに画面を左から右にスクロールさせた。
つまり、優は文化祭のときの写真を見たがっているのだ。
「文化祭の写真?何か見つけたのか?」
でも、またもや返事がなかった。
それどころか、優は写真を何度も拡大したり、もう一度前の写真に戻ってみたりと、俺には何を思っているのかわからない行動ばかりをとった。
俺は、もしかしたら…、という1つの可能性を頭の中に見出だした。
でもそれは、本当にそうだという確証がないし、本当にそうであるならとても喜べることなのだが、そうでなかったなら俺は苦しい。
それでも、俺はほんの少しの可能性を信じてみたかった。
そうであってほしいと思った。
「……優…。………もしかして………見覚え…、あるのか………?」
恐る恐る聞いてみて、声が徐々に小さくなっていった。
一瞬、俺の声は聞こえなかったのかもしれないと思った。
優が言葉を発せず、指をピクリと動かすこともしなかったから。
でも、ちゃんと返事をくれた。
それも、俺が望んでいたことだった。
「━━━━━━……なんかこれ、懐かしい気がする…。」
…信じられなかった。
不意のこと過ぎて、本当に優がそう言ったのかわからなかった。
それでも俺はそれが夢であってほしくなくて、その言葉を必死に掴み止めておきたくて、でも言葉は掴めなくて。
だから俺は隣に座っている、自分でも自分の言葉に驚いていて、それでも俺に優しく微笑みかける優を強く抱き締めた。
「……優ッ!」
「…いっ、…痛い、よ…、武博…。」
痛がる優。
でも俺は力を加減してあげることが出来なかった。
するとそこへ、明良が戻ってきた。
明良はぎょっとしたのだろう。
おかしな声を上げていた。
「うぉをい!?お前らなに人の部屋で愛し合ってんだよ!」
「愛…ッ!?ち、ちっがうよ!」
「おい、タケ!そういうことは他所でやれって!」
「だ、だから違うってば!」
明良が俺を優から引き剥がそうとしたが、俺は力を緩めたくなかった。
この喜びが自然と消えるまで離したくなかった。
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