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#99
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俺はリビングのソファーに横になりながら、さっき優から聞いた言葉を何度も頭の中で復唱し続けた。
『…………………何だか、俺が記憶をなくす前…。………文化祭の当日。
……本当の俺は、この記憶を絶対に忘れたくないって、壊したくない、なくしたくない、守りたいって思ってたんだと思うんだ。
……本当の俺にとって、あの文化祭のときの記憶は、すんごく大切なものだったんだよ。』
声の調子まではっきり覚えてる。思い出せる。
でも、何度思い出しても優のある言葉が引っ掛かる。
…″本当の優にとって、文化祭の記憶はとても大切なもの″だった。
以前に光と話していたときに、光は言っていた。
『…………あの、文化祭のときもほとんどずっと…。』
つまり文化祭のときはほとんど光が現れていたということだ。
…たぶん、グループの8人で打ち上げに行ったときもそうだ。
…………何でそんなに…?
俺は純粋にそう思った。
…確かに、光にとっての文化祭の価値というものが俺には計り知れない。
光にしてみれば、とても大切なものだったのかもしれない。
…でも、それにしては少し大袈裟すぎるように感じるところもある。
光は去年だってこの学校の文化祭を見ているはずだ。
去年よりも今年の文化祭のほうが大切?どうして?
……俺と一緒にいたから…?
自惚れているのは重々わかっている。
でも、それ以外に理由が思い付かない。
あの光が文化祭が大好きな性格には見えない。
あのときの俺と光だったら、俺のほうが明らかにはしゃいで楽しんでいただろう。
光なんて、俺の行きたいところに合わせて一緒に回ってくれて、食べたいものとかやりたいこととか見たいことなんて、全部俺の要望だった。
そんな光が、あの文化祭が何としても忘れたくないなんて思わないだろう…。
そもそも、光の価値観なんだから、俺にはわからなくて当然だ。
だが、俺にはさっき聞いた優の言葉が気になってしまい、妙な違和感を感じてしまった。
「…はぁ…。」
俺は小さく溜め息をつき、ソファーから起き上がった。
そしてテーブルに置いていたケータイに手を伸ばした。
パスを打ち込みケータイのロックを外し、アイコンを押す。
軽くスクロールを繰り返し、ある一点を見つけそこを拡大する。
画面に映るのは、さっきまで優が話し、たった今まで俺が考えていた出来事のその後の光景。
…8人で無理矢理自撮りしたんだ。全員が綺麗にちゃんと画面に映っているわけない。
端の2、3人の顔は欠けてしまっている。
撮った奴の技術もあるけど、もんじゃ屋に行ったせいか、鉄板の湯気と手ぶれで少し見にくい。
それでも、8人みんなが笑っていた。
…━━━━━━━優に、会いたいなぁ…。
8人の真ん中で笑っている優の笑顔を見て、俺はとてつもなく悲しい気持ちになった。
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