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蒼の章9
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「……いない、か。」
そんな漫画やドラマみたいな事が起こるわけない。
小さく溜息をついた。勢いで来てしまったから、その後の展開は特に考えておらず、注文を待つオヤジと目が合うと出るにも出られず、取り敢えず前回と同じ冷やし中華を注文しそのままカウンターに座った。
親父は手早く調理を始め5分ほどで冷やし中華を俺の前に差し出すと、やはり奥に引っ込んでしまった。
コレ前にも見たぞとクスリと笑ったが、今回違うのは客が俺だけだと言うことだ。
前回も職安の帰りだったから時間も似たようなものだし、オヤジさんが好きなのかやはりあの局番がテレビから流れている。
冷やし中華に箸をつけた。
独りきりだからか少し冷静になった。馬鹿みたいに事件の事を気にしているが、客観的に自分を眺めると少し執着心がある気がしてきた。そうだ、やはり俺はおかしい。
はっきりとした理由は無いのに、急き立てるように情報を得ようとするなんて馬鹿げている。
「少し疲れてるのかな…」
そう言えばこのあいだ、急にもの悲しくなった。
保育園に母親がなかなか迎えに来ないとか、皆んなで公園で遊んでいたのに一人二人と帰路に着き、気付けばポツンと独りきり、そんな感情におそわれた。
気分が晴れない、それは鬱の始まりだと聞くからそれなのかもと思った。そう思うと自身を奮い立たせようという力が働いた。
よし、明日転がり込んでいた実家を離れよう。
自分を追い込んで環境を変えるんだ。
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