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蒼の章12
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「にぃちゃん」
はっとして振り向く。
声をかけられて一気に現実に戻される。
初々しさを残した中学生の男の子がニコニコしてこちらを見ていた。その顔に見覚えがある。
記憶が一気に戻った。
「カズか!?背のびたなぁ!お前元気だったか?その制服、そうか中学生になったんだなぁ?」
鈴木和也。屈託のない笑顔が印象的なこの少年は近所の子で俺に懐いていた。仔犬のように後をついてくるこいつが俺も可愛くて弟のように接していた。俺が22歳の春だからカズはその時小学校1年生になったばかり、就職が決まって田舎を出る日、映画やドラマみたいに駅まで付いて来て、いつ帰ってくる?と泣きながらプラットホームまで追いかけて来たから俺も思わず涙腺が緩んだ覚えがあった。
懐かしい。
それと同時に彼の成長に時の流れを感じた。
体は着実に子供から男へと変身途中で、背丈も伸びて俺に迫る勢いだった。ただ顔のパーツの端々に幼さがまだ残っている。
和也の家は親父がアル中のヒモで、母親は若く綺麗な女だが頭の弱そうなタイプで水商売をして生計を立てていた。まだ遊びたい盛りの若い女だったから子供の世話を焼くタイプではなかった。両親共にだらしなく典型的なネグレイトで、小さなカズはいつも汚れた服を着ていて、秋の寒い日にも薄着で放り出されていた。臭いと言われて友達もおらず幼稚園や保育園にも行かせて貰えずいつもお腹を空かせていた。
ある寒い日、空き地でうずくまっていたカズを見かねた母さんが連れてきたのがウチの家族との初めての出会いだ。
暖かい風呂に入れ、いつかリサイクルに出すのだと言って取ってあった子供時代の俺の服を着せた。家で殴られるのか、来た当初はビクビクしていたカズだが、遊んでやると徐々に慣れこちらの心をとろかすような屈託のない笑みを浮かべた。
カズを帰す時、寒かったり怖かったりお腹が空いたら何時でもうちに来なさいと母が言い含めた。カズが風呂に入っている間に洗濯して乾かした彼の服に着替えさせて、俺が当時お気に入りだった青いパーカーを羽織らせた。
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