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茜色の章8
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「それで、調子はどうなんだ?会わない間占領されそうにはなったのか?」
自分が思っていた会話の流れから始まらなかったから、どう切り出したら良いのか分からなくなった。というより、人を避けて暮らしてきたせいで、人との関わり方…特に同年代とどう接していいか分からなくなっていた。
もはや軽いコミュ障というレベルだ。
友達という響きは気にしないふりをしても、じわじわと雨宮の心に小さな波を立てて存在を誇示した。
どれ位の深さがあるのか分からない池に石を投げてその音で探ろうとするみたいに、四十九院の投げた小石は確実に水面を波立たせ、雨宮の心の何処かに沈んでいた。
「一度だけ来たけど、本当に一瞬だった。雨宮のことを考えていたら頭が一杯になってさ追い出せたんだ。この3日間、毎日雨宮のことばっかり考えてたよ。」
「そんなに不安だったか……?」
「別れる時はね。でも、雨宮の事を考えていたのは好きだからだよ。雨宮は俺の救世主だし、友達になって貰いたかったし、あと、綺麗でかっこいいし大好き。」
「綺麗とか、男を褒める言葉じゃないからな。」
恥ずかしかったのか景色を見るように背けられた雨宮の耳が赤く染まっているのに気付いた。
また、ぞうきんだ。
心がギュっとなる。
形容しがたい胸の高鳴りが気分を高揚させて、怒られるかなとちょっとだけ心配したけれど俺はそっぽを向いている雨宮の手をとって握った。
瞬間驚いて振り向く雨宮。
雨宮の姿がブレる。
一瞬不思議なものを見た。
雨宮を包み込むようにして光る金色の光が高い高い真っ暗な空から複雑な幾何学模様やオーロラの光の柱のようになって左巻きに渦巻きながら繋がっているのを。
ああ、綺麗だ。
あまりにも巨大な力だと感じた。
雨宮を俺の中に連れてくる刹那の光景だった。
2人して草木の緑や花の色以外は真っ白な色で統一された世界にフワリと堕ちた。俺は雨宮の腰を引き寄せて身体をぴったり合わせ支える。サクリ、と音を立てて草を踏み花園に降りた。
手は繋いだままだ。
雨宮は不意を突かれたから目眩でもしてるみたいに胸の辺りを押さえながら俺に身体を預けている。流石に心配になって大丈夫?と声を掛けたらキッと睨まれてたじろぐ。
「明希!お前……!」
「ゴメンね、雨宮。怒らないでよ。雨宮と凄く手を繋ぎたいって思ったんだ。」
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