アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
呂色の章1
-
息を切らして四十九院の所に走り辿り着いた。
足の裏の気持ち悪さは最高潮だったが、これは実際に蟻を踏み潰しているのではないと自分に言い聞かせた。なるべく足元を見ないようにしていたが、足を止めてから蟻が襲ってはこないかと心配になりつい下を見た。
(……!!)
赤い。靴の下からジワリと赤い液体が滲んでいる。
驚いて数歩後退りここまで走ってきた道を振り返るとここまで赤い足跡が点々と続いていた。
蟻は赤い血なんて流さない。
それが余計気持ち悪い。
ぞわぞわ背筋が寒かったが、今は明希が心配だ。
蟻が進入している状態で犯人と繋がっている場所に来てしまって大丈夫なのかと様子を伺う。
四十九院がヨタヨタと歩み寄り俺に手を伸ばした。
本能的にその手を握り引き寄せたが、視線は黒い穴に注がれた。これを祓わなければ、緊張しながら強く思う。
犯人の中に行くべきだろうか?この真っ暗な風穴の向こうに。
「…もう支配されるのは嫌だ」
四十九院の声は弱々しい。
恐れが伝わってくる。
「なら、支配されるな!」
お前がそんなんでどうするという思いと、そんな事にはさせないという使命感で奮起して怒鳴り、必死に方法を考える。
雨宮の様子に気圧されて四十九院は二、三度黙って頷き繋いだ手を強く握る。
目が慣れると黒い穴の中では大挙した蟻が右往左往しており、どちらかと言うと溢れそうな蟻の数の力が、たまたま出口を見つけて溢れた、そんな感じに見えた。
まだ、意思を持って四十九院を侵攻しているわけではなさそうに思えた。
一度完全に追い返した日のように、この穴を完全に塞げたなら平穏に暮らせるはずだ。
四十九院にもっと深く潜って彼の魂に自分の霊気を放射した時の事を思い出した。
あの時、自分の金色の霊気が明希を通して増幅されて白い世界に花火の様に弾けて広がった。
この状況で集中して四十九院の中に更に深く潜れるかは不明だが、やってみるしか無いのだ。
「明希、前やったみたいにお前の中に潜って魂に力を放射してみる。あの花火みたいな光に蟻を押し戻す力があるかわからないけど」
「わかった。雨宮やって!」
蟻が視界に入らない様に目を閉じて四十九院にチャンネルを合わせて行く。四十九院は雨宮の唯一の生きた理解者だ。
もう、自分と同じ様な能力者にはこの世界では出逢えないかもしれない。
自分で思っていたよりもいつの間にか四十九院の存在は重くなっていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
106 / 159