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呂色の章11
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「学校は楽しいか?友達出来た?」
俺は今カズが上手くやれているのかどうか心配になった。
カズは小学校の時から友達がいなかった。
俺の問いに困ったような顔で微笑むカズの表情が今も昔とさほど変わっていないと物語っていた。
カズの当時の汚れた着衣を思い出した。うだるような暑い夏にだってまともに風呂にも入れず、うちに来てお下がりではあるが清潔な服を着るようになったものの勿論毎日とはいかなかった。同い年の子供たちに臭いだなんて言われたら深く傷付く筈だ。施設が同じ学区内にあるから、当時のカズを知る子供達と今も肩を並べて学んでいるのだ。
子供は残酷だ。
高校卒業したあとも残った友人とは大人になってからも付き合いが続く事が多いが、中学くらいじゃまだまだ子供で、モラルよりも嗜虐的な遊びを優先する世代だ。
高校を卒業する頃までに精神的に成熟して大人になる奴と、そのまま大人になる奴とに分かれる。
そのまま大人になった奴らは、大人になってからも虐めをする。能力で劣る者を笑う、不器用な者を笑う、自分と違う個性を笑う、…子供の頃の虐めの快感が忘れられない。
やっている側は、誰もその原動力が自身の立ち位置探しだとは気付いていない。もしくは妬みや嫉みかもしれない。
自分の下を探して優位に立った気になる。
貶して蔑める事で自分を納得させる。
何も生まない無意味な遊びだ。
ましてや、カズのように生まれ持っての環境に翻弄される人間を蔑むのは冷淡だ。
年を経て、カズの周りの人間にも変化が起こって欲しかったがそう簡単にはいかなかったようだ。
「俺にはにぃちゃんがいるから寂しくない、大丈夫だよ。」
「カズ、もうちょっと時間がたてばみんな大人になってお前にも友達いっぱい出来るからな。まだ、お前の良さが周りに理解されてないだけだから。」
「…そうかな…」
「絶対そうだ。」
ゴクリと飲んだコーラがやけに喉にしみた。
生きていれば幸せになれる筈だ。
絶対に。
そうして俺は会社の事を思い出していた。
そう、「傘男」の事を。
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