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宿~オリジナル
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《部屋》
さらさらと
ことことと
渓流の流れ下る音が耳に快い。
川面に張り出した木々の緑が鮮やかで。
小鳥の声。
虫の音。
木々間の空。
ただもう美しい。
ゆっくりおやすみください。
主が挨拶して去る。
妻女が主の目をぬすみ、そっと言う。
夕風はいくらでも、当たってかまいませんが、夜風はからだに毒です。
必ず夜半はガラス戸をお閉めになって。
できればカーテンと、手前の障子も。
はあ…
間抜けな返事になってしまったが。
だって蛍が美しいのだ。
閉めてしまったら見られない。
うちの部屋はあけときましょう。
りかさんと、ななみさんの部屋は閉めておきなさい。
うちの部屋からみんなで見ましょう。
月田の提案にみんな賛同した。
《蛍》
月田の部屋に集まったのはりか、川浪、あたし、月田。
ななと入江は?
もうすぐ来るか、全く来ないかじゃない?
りかが意味深に笑う。
やだやだ発情期。
見て見て飛び始めた。
一つ。
二つ。
みるみる光の乱舞になった。
淡く黄緑に明滅。
あちらに。
こちらに。
ロマンティック…
でも幼虫は肉食。
そうなん?
カワニナとか、タニシ食うのとかいるってさ。
成虫は、口とか退化しちゃってるから水分摂るくらいしかできないらしい。
成虫は、幼虫時代に蓄えた栄養だけで生き抜いて、繁殖とかもするわけか。
あの光は恋愛トークなんだよねー。
やっぱロマンティック!
などと話してる間も蛍は乱舞し続け、ななみと入江は現れなかった。
蛍撮っとこう。
スマホを出そうとしてはた、となった。
部屋に忘れてきた。
取ってくるね。
自室に戻る。
あったあった。
戻…
閉じた障子の外。
窓の外。
何だろう…
《朝》
チェックアウトしたのは、ななと入江だけだったという。
あたし?
あたしはまだ。
川にいる。
あの部屋に泊まる誰かを待っている。
待っている。
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