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#2
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ここまで双子と会話を重ねて返答に窮したのはこれが初めであり、対する男の対応は一般的な基準からすれば冷たいと批判されるだろう。
だが、もしこれが大の大人であったならば、男は迷わず会話を終わらせていただろうという事を考えると、むしろ寛大な対応であると言えるかもしれない。
数秒の後、双子の片割れが口を開き、もう片方がその後ろに隠れた。
「春とだけ、その、居たいけど、でも面倒を見てくれる人にも居て欲しい」
「つまり?」
「・・・ど、どれ、い、が」
それだけ言えば伝わると思ったのか、それ以上は言いたくなかったのか。
言葉が止まる。
年相応と言えるのだろうか。
奴隷を欲する自らの言葉に畏怖と嫌悪を感じるのは。
だがそんな双子に構わず、苛立ちを潜ませた男は双子にとって予想外の言葉を告げた。
「性別、国籍、年齢、性格、見た目その他諸々、希望はあるか?」
そんなに、簡単に。
双子の目はそう告げていた。
何かが、壊れる音がする。
その音は、双子にしか聞こえなかった。
先ほどよりも短い沈黙の後、片割れの後ろに隠れていた方が、発言する。
「そういうのは、特に、無いです。でも、喋ってほしくない。人っぽいのは嫌です」
「どうやって指示を出すつもりだ」
「あ、それは、その」
最早、まともな人間の会話では無い。
それを加速させるかのように、男が言葉を紡ぐ。
「ならこうしよう。
奴隷にしたら舌を切って喉を焼く。
そしてそいつらの世話と、お前たちが暮らす場所全体の管理を受け持つ執事を一人つける。
それなら二人きりではなくなるが、お前たちの望む形に最も近い形にはなる」
「で、でもその二人きりが、良くって」
「春、ちょっと待って。
それを言い出したらまた同じことになっちゃうし、それに執事が居なかったら僕たちがその奴隷の面倒を見なくちゃいけなくなるんだよ?嫌でしょ?」
発言を遮られた少年は、ばつの悪そうな顔で頷いた。
どうやら、感情が高ぶると若干性格が変わるらしい。こちらの方が幾分聞き分けが悪そうだ。
「あ、えと、じゃあ一つ訊いても良いですか?」
「何だ」
「執事ってどんな人ですか?」
「選びたいか?」
「あ、はい。どんな人がいますか」
「お前たちの希望に沿いそうなのは二人だな。
今まで私の側近だった者と、もう一人がその孫娘だ。
どちらも見た目はある程度整っているが側近は既に老人の域。
娘の方はまだ若いが、厳密な情報を知りたければ五分待て」
「春、良いよね?」
「うん」
厳密な情報を必要とすることも無く、双子は答えを返した。
「「側近の方でお願いします」」
「分かった。
他に何かあるか?」
「「特にないです」」
「暮らす場所の準備に少し日が掛かる。
それまではこちらが用意した場所で暮らせ、念のために他人は出入り出来ないようにしておく」
「「有難うございます」」
今まで何千、何万という人間に頭を下げられた。
その度にこの不毛な文化は何故無くならないのだろうと男は疑問に感じていた。
それは今も然り。
だが双子が頭を上げるとその目には濁った光が灯っており、成程これを楽しむのもまた一興かと男は口角を上げた。
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