アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
誘拐
-
・・・俺は多分、誘拐されている。
両手両足が縛られ、口には猿ぐつわ。
辛うじて目隠しはされなかったが、周囲は真っ暗で何も見えない。
横たえられた身体が感じる事が出来るのは、乗せられているトラックの走る振動と、数人分の息遣いだけ。
続いていた振動が緩やかになり、そして止まった。
車のドアが閉まるような音と足音が複数聞こえ、二重になった幌の向こうで話声が聞こえる。
「おう、早いな爺さん。今日の荷物はちと骨が折れたぞ。
大体あんたのご主人様ってのは一体何をするつもりなんだよ、これが原因でしょっ引かれるなんてのはごめんだぜ俺たちは」
「まあそう仰らないで下さい。
そちらが非合法な手段でもって利益が得られるのは、朝霧様の後ろ盾合っての事でしょう?
別段脅そうなどとは考えていませんが、こちらとしても再度他の方と契約を結ぶのはなかなか手間がかかるのです。
これからはまた日用品が中心になるかと思いますので、どうかよろしくお願い致します」
「あ、いや別に、手ぇ切ろうって言ってる訳じゃなくてな・・・まぁ良いか、とりあえず今日はここで商品のお披露目だったよな?
早速見るか?つっても流石に五、六人が限界だったけどよ」
「そうですね、拝見させていただきます。
ですが幌はそのままで結構。私が中に入って確認しますので見張りをお願いします」
「おう、中の連中は全員縛ってあるからな」
そこで会話が途切れ、暗闇の一端で幌をめくるような物音がした。
反射的にそちらを見たが、懐中電灯のような光を当てられて目を逸らす。
何人かはここぞとばかりに暴れているようで、どすどすと鈍い音が聞こえる。
俺は体力を温存して少しでも自由になったら暴れてやろうと、じっと懐中電灯の明かりを睨みつけていた。
トラックの荷台に入って来た人物は一人一人の顔を確認しているようで、折々その光が止まる。
俺の顔も照らされて、瞼の裏が赤くなった。
そして全員の確認が終わったのか、その人物は荷台から出て行く。
一体何がしたいんだよ、糞ったれめ。
俺は再び真っ暗になった空間に向かって、頭の中でそう吐き捨てた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
4 / 72