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重機
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それから数十分後、俺は木の上に居た。
走り回って逆に見つかるよりも、木の上でじっとしていた方が優勢に立てると思ったのだ。
それにしても島一つ持ってその上に屋敷建てたって事か・・・でもそれならそれで考えがある。
俺は誘拐された時の会話を思い出していた。
『これからは日用品が中心になっていきますので・・・』
そう、つまり物資のやり取りがあるって事だ。
どうやったって外界との全てをシャットアウトすることは無理だ。
ここで隠れてさえいればいつかそのチャンスが・・・何だ?この音。
遠くの方から地響きと共に、木が軋むような音が聞こえる。
俺は木の上に立って目を凝らした。
・・・何だよ、あれ。
見たことも無い様な形の重機が木を強引に避けて押し進んでくる。
重機と言っても無駄な大きさは無く、木と木の間より少し大きなくらいだ。
だが早い、自伝車並みの速度はある。
そして更に俺はある事に気付いた。
「何で、こっち来てんだよ」
その重機は確実にこちらに向かってきているのだ。
気のせいでも、恐らく偶然でもない。
どかすことが出来ない木があったりしてもその横を迂回し、結局はこちらへの進路を取り直しているのだ。
こっちの位置が分かってるのか?だとしたら何で・・・これか。
俺は手首にぶら下がっている手錠を睨んだ。
俺が唯一身に着けている俺の私物で無いものと言ったらこれしかない。
外すことが出来ないことは分かっていたので、とにかく逃げようと俺は木を降りる。
しかし運の悪い事に俺は足を滑らせて半分落ちる様な速度で着地し、右足をひねってしまった。
歩けない程ではないが走る事は出来ない。
俺は痛みに耐えながらも何とか歩き始めた。
だが背後から聞こえてくる音は大きくなるばかりで、ついに声が聞こえて来た。
「あ、樹っ、樹っ、居たよ、ほらあそこ」
「えーっと、あ、ほんとだ流石だね春」
「ふふっ、やった」
「三番、射程圏内に入ったら教えて」
「あと数秒です」
俺はもう片足を上げて跳ぶように走っていた。
「・・・ご主人様、射程圏内に入りました」
「春、それじゃあいっしょに狙ってね」
「う、うん。何か緊張してきちゃった」
「ふふっ、だいじょーぶ、手繋いで」
「うん」
何かをしようとしているのは明白だが、後ろを向いて確認する余裕も無かった。
そして次の瞬間脇腹にちくりとした痛みが走る。
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