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命を賭して
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「せ、い、ざ」
二人の姿勢がのろのろと戻る。
「で、でもこれ、膝が、痛くて」
「だから意味があるんだろうが、馬鹿」
「あ、い、イチ今春に馬鹿って」「あーうるせぇっ!話が進まねぇじゃねぇかっ!俺が良いって言
うまで黙ってろっ!」
「「・・・」」
「返事っ!」
「「ぁ、ぃ」」
「・・・はぁ。まぁいいや。
あー、とりあえず一言、言っとく。俺は物じゃねぇ。分かったか?」
「「ぁぅ」」
これ返事って言えんのか?・・・めんどくせぇなぁ。
「よし、分かった。声出しづれぇんなら頷くか首振るかしろ、それならできるか?」
・・・こふり。
「どっちなんだよっ、二人揃って斜めに首振るんじゃねぇっ!」
苛つきが収まらなくなってきて、俺の口調が更に悪化する。
「イチ様、お手伝い致します」
見かねた三番が助け舟を出した。
「樹様、春様。今から私が言う事をよく聞いてください。返事は不要です。
良いですか、イチ様は物ではありません。
これはお二人のご意思に関係の無い、純然たる事実です。
この話を無視してもし仮にご主人様がイチ様の事を物の様に扱った場合、私は何も致しませんが、それに対してイチ様がお怒りになったとしても止めません。
自業自得です、反省してください」
やはり説教は年寄りの得意分野なのか、流れるように、でも二人にとっては流せない内容を要所に挟んで話を進める。
双子はそれに対して不機嫌そうになったり、怯えたりしていた。
「それから、私の過去についてですが、言いたいことが有るならばどうぞ仰ってください。
その代わり、その際はもう二度と私はお二人の事をお名前ではお呼びしません」
「ぇ、で、でも」
初めて樹が口を挟んだ。
春の表情も見るからに焦っている。
「異論は一切聞き入れません。
執事たる私が強要できることでは無い事は分かっています。
ですが考えてみてください。
樹様、私が春様の悪口を言ったらどう思います?
春様、私が樹様の悪口を言ったらどう思います?
私にとって、私がしたことを嘲笑されることは、お二人で言えばつまりそいう事です。
今後一切、私がした事を、そして私の弟の死を、笑う事は許しません。
それが嫌だと言うのであれば、どうぞご自由に折檻なさってください。
それで例え死んだとしても、本望です。
何なら今、死にましょうか?」
三番が力強く宣言し、唐突に尋ねた。
双子の手に、一つの命が乗る。
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