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雪だけが知っている
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「なぁ、外でたいと思わん?」
足先が凍りそうな寒さの中、俺がわざわざぬくいこたつを放り出してまででた声の主は第一声そう言いはなった
「…思わんなぁ。」
むしろこの寒さのなか外に出たいと思うやつの気が知れん
だがあいつは違ったようで向こう側でそっか…と小さく落胆したような呟きが聞こえる
「どっか行きたいとこ在るん?」
「行きたい所いうか、しーちゃんと居たいだけっちゅうか…」
末尾はどんどんと小さくなっていき最後はよく聞こえんくなりながらもあいつにそう言われてしまっては俺も弱い
「あー…どこで待ち合わせしよか?」
「…しーちゃん外出てくれると!?」
「…あぁ、良かよ。」
俺の一言で一喜一憂してる姿は見えずともやはり可愛らしい
家族はまだ寝ているはず
近くの神社で落ち合おうと約束し、そう経たないうちに外へと足を踏み出すと昨日降っていた雨が夜のうちに雪となり降り積もったのだろう
そこはいわゆる銀世界となっていて思わず息を飲んだ
どうりで寒いはずだと思いながら足元の雪を踏みつける
恐らくこの寒さ故に誰も外に出ていないのだろう
誰に汚されることもなく綺麗な真っ白い雪が一面に広がっていた
そんないつもとは違う道を踏みしめながら神社にたどり着くと既に到着していたらしい優が鼻を真っ赤にしながら俺を見つけるとはにかみながら小走りで寄ってきた
「そんな鼻赤こうして…神社の屋根に入ってたら良かに。」
「待ちきれんかってん。」
そう言いながら瞳を緩める優はいつもより一層儚げで胸がざわつく
「突然、電話してきてなにかと思ったら外でよて…ビックリしたわ。何かあったん?」
「んーん…何も無かよ。ただ、しーちゃんに会いとうなったんよ。」
なにかを誤魔化すように笑う優を見ていられず手を強く握った
「それだけじゃ無かろ?正直に言ってみ。」
するとくしゃりと顔を歪ませ下手くそな笑顔になりながら小さく言葉を溢した
「こんな寒いなか皆外には出えへんやろ?今なら誰の目も気にせずしーちゃんに会えると思うて…。ごめんな、しーちゃん寒いの嫌いやのに…。」
そう言う優の瞳にはどんどん涙が浮かんでいき今にも瞳が零れ落ちそうになっている
「嫌やったら来んよ…そんな俺に気使わんで良かと。」
照れ隠しで頭をわしゃわしゃと撫でながら顔を覗き込むと優が笑った拍子に瞳に溜まった涙が頬を伝い足元の雪を溶かしていった
友達や親にこの関係を言うこともできずかといってこのままでは居られないのを奥底ではわかっていながら、今だけはーと冷えきった頬に手を添えて白い息ごと飲み込んだ
雪だけが静かに二人を見守っていた
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