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隙を魅せて。9
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「美味しい…」
数分立ち尽くした後で我に返り
テーブルの上に置かれた夕食を目にする
近い方の椅子に座ると、出来たばかりだろうラップが蒸気で曇っていた
「顔もいいし、社交的で…人気もあって頭も悪くない…それなのに俺がいい……そんなん誰が信じるんだよ」
一人になり余計積もる悩みは増していく
大嫌いだ、なのにやっぱりどこかで歯切れの悪さが目立つ
「………っくそ、なんで俺が折れてやらなきゃなんねんだ!」
不機嫌そのものでリビングを後にする
─────────────…
コンコンッ
「さ、西園寺…!」
「……」
ノックをして呼び掛けるも返事が帰ってこない
「寝た、のか?」
『……なんですか?』
ドア越しに小さくだが確かに返答が帰ってきたことに顔をあげ、ドアを見つめる
「…お前、何そんなに怒ってんだよ」
『別に、怒ってなんていませんけど』
「嘘だ」
『だとしても先生には関係ないです』
「ある!おおありだ!生徒会長なんだぞお前は…」
『……それが何ですか。』
「何って……」
『俺、…先生のそういうとこ嫌いです』
「え…」
嫌い?っつった?西園寺が俺のことを……?
『人のこと見てそうで見てない…結局は自分のことだけ…』
「それは、……けどお前だって!」
『何いってんですか?俺はそういう人間ですよ…』
「っ……なんだよ、お前訳わかんねー…」
『分からないのは自分の行動でしょ?挙動不審です』
「………」
『話がそれだけなら、………帰って下さい』
「っは?お前が居ろって言っただろ!?それに服も!」
類の態度の急変に押さえきれない怒りを目一杯ぶつけようとする
だが言葉を最後まで述べることはなかった。
否、ある音によって遮られたからだ
そのある音とは─────…
『どうやら乾いたみたいですね』
「…………」
『もう、こんな嫌いな奴の家から出ていいんですよ?』
「……だよ」
『はい?』
「わかんねんだよ…」
なんだよ、訳わかんねぇ
何がこんなに立ち止まらせるんだよ…
「お前みたいな二重人格野郎、俺の一番嫌いなタイプだ!遊び相手は誰でもいいみたいな奴」
『…』
「けど、しようがねーだろ!俺だって教師だ、生徒の世話を焼いて何が悪い」
『……』
「第一言い寄ってくんのはお前なのになんで嫌いな奴を慰めなきゃいけないんだ」
『先生…』
「言いつけてないだけいいと思えよ!」
『え?』
「?」
『言ってない…んです、か?なんで』
「だって…」
『だって?』
「…そ、それ言ったら俺も事情を話さない訳にはいかないだろ…」
『それだけ?』
「以外なにがある」
『…それで、帰らないんですか?』
「まだ、ご飯食べてないからな」
『っ…』
「……食べないのか?」
『どういう意味で、ですか?』
「っ…一緒にだよ」
『いいんですか?』
「嫌ならいいんだが」
『……』
「出てこいよ」
『けど…』
「西園寺……、一緒に食べようぜ?」
それを最後に類の言葉は聞こえなくなる
再びノックをしようと、手をかざす
「……」
すると寸前でドアが開かれる
「…」
「あの…心咲さ、……先生あの…」
「リビング行くぞ…」
「あの!」
「もういいって、それとその仰々しい態度もやめろ」
「はい」
「分かったならいい」
「ん…」
「それと、飯…上手いな」
「え?あ、あー、それ得意だから」
「へぇ、料理好きなのか?」
「まぁ」
「俺、てんで駄目だから羨ましい」
「そ、なんだ」
「お前なー、テンション低い!」
「そんなこと言われても…」
部屋から出てきてからずっと目を合わそうとしない類に心咲は気まずくなり、口を開くも悪態をつくばかりだ
「なんだよ!なにがんな不満なんだよ」
「当たり前だろ…!好きな人が目の前に居て、でも触れられなくて…我慢してるのに無防備だし!どうゆう反応とればいいかなんかわかんねぇよ!」
机を思いきり叩いて立ち上がるとイスが衝動で倒れる。そして類も抑えていた感情を吐き出す
「っ!俺ははなっからお前が嫌だと言ってる、それで諦めることの出来ないお前が悪いだろ」
「じゃあ、なんで拒まなかったんだよ!」
「っ…だからあれは俺が悪かった…俺がしたくなったんだ!」
「なんだそれ…」
類の言葉に一瞬しり込みする
「それだけだ、あの一回が最初で最後。」
「……アンタは俺のこと何だと思ってんの?告白も嘘じゃねぇってんのに、それすらなかったことにしてさ」
「迷惑だからだろ!俺は教師だ、生徒とどうにかなるなんて普通ねーだろ」
「っ…なんだよ、それ…迷惑ならそー言えばいいじゃん、無駄に期待させんじゃねーよ!」
「させてねぇ!」
「……」
「俺じゃないと、」
「?」
「俺じゃないと駄目な理由なんかねーんだろ」
「…あったとしても教えねぇよ」
「なんで」
「俺の思いはアンタには届かないから」
「……そうだな」
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