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隙を魅せて。17
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「………」
何がしたいんだろ、俺…
また、同じことしたのか?
西園寺のあの傷ついたような顔…頭から離れない
俺は結局、西園寺のことどう思ってんだろ
言葉で言うほど、最近は嫌いじゃない
だけど、す、好きって感じでも…
好き──…
「っ、何しょげてんだよ。嬉しいに決まってる!あんなしつこかった奴が居なくなるんだから」
っ……駄目だ。
俺…西園寺が────
「好き…なんだ」
──
「雨…」
俺の気持ちに便乗して空が泣いてる
職員室で阿久津先生に会っても帰りの言葉すら出てこなかった…分かってたのか阿久津先生も何も言わなかったけど、心配かけただろうな
雨の降る予報ではなかったため当然ながら傘は持っていない
濡れて帰るか……
「でさー」
「っ!」
聞こえた声は西園寺の友人、緒形啓のもの
足音は二人分…
咄嗟に下駄箱の端に駆け寄る
「お前はあーゆータイプが好きなんだろー?あんな女あんまりお前の回り居ねぇよなー」
「女だったらそんなもんだろ」
「けどさ、やっぱ可愛い方がいいじゃん?」
「じゃあ、あの人はどうなんだよ」
「あ、あの人はだって!お、女ならって話だろ!?」
「別に、俺は女とか男とかより心咲さんが好きだから…」
っえ…!
「諦めようとか思わねぇの?」
「諦めてるよ、けどやっぱ好きなんだよ」
「ずっと好きだよな、中学ん時みただけでよく覚えてんよなー」
「あんな衝撃的なことされたら忘れようがねぇよ」
「俺なら次の日には忘れてっけどなぁ」
「そりゃ啓ちゃんだからだろ」
「んなことねぇもん、あれだろ?ビンタ」
下駄箱でゲラゲラた笑う啓の声は雨と混じっても響き渡る
「ぅん、高校で再会したとき運命だと思った…」
「なーんか、ラブだなー」
「うっせ、てか帰ろうぜ」
「うお!?類ー雨ふってんぜー?」
「俺傘持ってるし」
「類ぃー、いーれーてぇ?」
「やーだ」
「なっ!類!!」
「嘘だよ、ほら帰ろう」
「あー、おま…いい彼氏だな」
「彼氏じゃねーだろ」
「じゃあ、彼女?」
「置いてくぞ?」
ギャーギャーと騒ぎながら雨の中を帰っていく二人の後ろ姿はとても楽しそうで恋人同士ならお似合いだ。
「…何考えてんだ」
今更気付いた感情に冷たい雨は染みる
肌寒いこの季節の雨は冷たすぎる
だが、今の心咲には調度いい
頬に伝う涙が雨と混じってわからなくなっていた
──────────…
「え?休み?」
「あぁ、風邪だと…昨日の雨にやられたらしい」
「昨日の雨……」
「7時すぎに帰ったからばったり雨と被ったらしい」
「7時頃…」
「なんか、あんのか?7時頃に」
「いえ…」
「ふーん、そー」
頭にハテナを浮かべながら類を見つめる阿久津はキョトンとしていた
「昨日のこと怒ってんの?」
「いえ、お陰で諦めようと思いましたし」
「そー」
「はい、じゃあ俺はこれで」
「おー…諦めたって顔してねぇじゃん…」
阿久津は類が職員室から出ていくと微笑みながら悪態をつく
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