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隙を魅せて。19
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「本当上手いな、料理」
「まぁ、家庭料理程度なら不自由しないくらいには…」
「そっか」
「えぇ」
会話が終ると必ずできる沈黙
この状況は気まずい
「その、今日学校どうだった?っ数学…入ってたよな確か」
「それなら自習でしたよ」
「そ、か」
「先生が来てなくてざわついてました」
「え、あー珍しいから」
「えぇ、残念がってる人もいましたし」
「っ、それは…ないだろ好かれてないし俺」
「そう思ってるだけですよ、以外と人気なんですよ先生…授業厳しいけど質問には分かりやすく答えてくれるし無愛想だけど優しいって言ってます皆」
「やめろよ、恥ずかしい…」
「それくらい先生のことを見てる人がいるって話ですよ」
「そ、そっか…」
どうしたらいいんだ、この状況は…自分で招き入れたにも関わらずバカすぎる
俺、前までコイツにどう接していたか分からない
急におも苦しい気持ちになり始める。
「先生…」
「な、なんだ?」
沈黙を立て直す手立てを考えていると不意に声をかけられる
明らかに動揺した
「1つだけ聞きたいことがあるんです」
「…なんだよ?」
「昨日…」
ドキッ
“昨日”
それに該当する答えが幾つも頭に浮かぶと
強ばり胸が高鳴った
「7時台…いえ正確にいうと7時から7時30分頃…どこに居ましたか?」
「なんで…」
「答えて下さい」
真剣な眼差しに小さく目を開いた
「っ…学校だよ」
「俺、昨日その時間に帰りだしました…」
「だから?」
「学校から先生の家に徒歩で30分程度です…」
「それがなんだよ」
「もし先生が俺よりも10後に帰っていたなら俺が帰ったのは7時頃なので20分弱…それより後に帰ったならそんなに雨には濡れていない筈です」
「……」
「多少濡れても風呂に入れば風邪を引くことは免れると思います…なのに今日こうして風邪を引いている、帰って風呂に入らなかった理由はなんですか」
「……」
「俺よりも先に帰っていたらどこかで見かけてる筈なのでそれは考えられません…もしあの場に居たのならば、話は別ですが…」
「……」
「どれが正解ですか」
声が言葉にならない
なんで昨日のことを聞くのかも理解できない
どうしたら、いいのか分からない
関係ないのになんでそんなこと聞くんだよ
俺ばっかこんなの理不尽だ。
「っ…んで、どうでもいいだろ」
「答えて下さい」
「……た…お前の言う通り、あの時間俺も居た」
「そうですか」
「だったらなんだよ…!別に何も聞いてねぇから安心しろよ」
「違います」
「違うってなんだよ…なにが違うんだよ」
「…俺、もう帰ります」
「っ!待てよ西園寺!」
咄嗟に類の腕を掴む
「離して下さい」
「嫌だ」
「先生!」
「いい加減にしろ!!」
「っ!」
「なんだよ、お前…ふざけんな!関係ないって言ったくせになんで捜索すんだよ!変な情けかけんな!」
「せんせ?」
「諦めらんねーのに諦めんなよ!俺はお前のことなんも覚えてねーし、独り善がりも大概にしろ!」
「っ…」
「お前は俺だけ見てればいいんだよ!!」
「え…?」
は?
今、なんて……俺
「ちが、今のは…」
あ、何言ってんだよ俺…!
「そーゆんじゃなくて」
涙腺崩壊しそうだ、格好悪い
「ごめんなさい」
俯いて涙を堪えていると頭上から降ってきた言葉に目を見開く
その瞬間、小さな粒が床に落ちる
「諦められない、誰になんて言われてもずっと好きだ」
「っ西園寺、俺…!」
「だから、期待させないで下さい」
「え…」
「そうやって怒るとこもちょっとした言葉に期待してしまう…咄嗟に言ったんだって言い聞かせても…もしかしたら、って考えてしまってらちがあかない」
「っ西園寺!俺」
「お願いだから、手を離して下さい」
「……っ聞けよ西園寺」
「聞きたくないですよ」
「西園寺!聞けよ…」
「お願いします…手を離して下さい」
「……頼むから俺の話、聞いて…」
涙を流しながら類の腕を強く掴む心咲に類は困惑する
「なんで…必死なんですか、そんなに俺のこと嫌いですか」
「…なんだ、よ…」
「え」
「好き…なんだよ…俺…スゲェ、お前のこと好きなんだよ…」
「え…?」
「お前がそれでよくても、俺が好きだからどーしよーもねぇだろ!諦めんなよ、じゃないと……俺が困るんだ……」
強ばった体に力が入らなくなり膝から崩れる
床に沢山の雫を染み付けながら頬を伝い溢れ出す
明日どんなに腫れようととてもこの涙は止まりそうにない
気づかなければよかった。
嫌いだから気になって、気になるから好きになる
いつの間にか掴んでいた手は涙を止めるための覆い隠されるものとなっていた
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