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隙を魅せて。31
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「送って貰って悪かったな」
「いえ、戸締まりには気をつけて下さいね」
「あぁ、じゃあ」
「はい、また明日」
パタン、と閉まるドアを最後まで見つめ一息つく
「流石に疲れたな…」
もう一度一息つくと夕飯の準備を始めた
―――――………
「日向先生」
「…西園寺」
「ここじゃは話せないので今…大丈夫ですか?」
朝一で職員室に現れた類は裏の顔を知っている心咲としては一歩引いてしまうような威圧感を纏っていた
「大事な話か?」
「えぇできれば、二人っきりで話したいですね」
類は“二人っきり”という言葉を妙に協調させ言う
そして心咲はスッと席を立つと屋上の鍵を手に職員室を後にする
―――――――
「それで、二人っきりじゃねーと駄目な話ってなんだよ」
「昨日どこにいたんだよ」
「は?」
「帰りに職員室を覗いた時にあんた居なかった」
「あー来たのか、多分…トイレだったんだろ」
「5分以上職員室の前で待ってたけど?」
「少しくらい遅くなることだってあるだろっ」
「ふーん」
「トイレ事情くらい俺の勝手だろ…」
「心咲さん…なんか隠してない?」
「俺が、お前に何を隠さなきゃなんねーんだよ」
「さあ?」
「お前なぁ」
何が言いたいのか真意が掴めない類の発言に自分が言った言葉を整理する
なにも変なことは言ってないはず…バレる訳がない
「なにかあったら言えよ」
「何もねぇよ」
「……」
なにが言いたいんだよっ…
「何、どうしたんだよなんか少し変…」
「心咲さん…」
消えそうな声で名前を呟くと心咲を腕の中へ引き込む
「昨日昼間素っ気なかったから怒ってんの?」
「は?あれは…っ俺の知らないお前が在るのは当たり前だろうが、怒ってねぇよ」
「そか…ごめん」
「謝んな馬鹿」
不甲斐ないことに類に抱き締められていると落ち着く
本当なら年上な俺がリードの1つでもするところなのにな…
こいつの腕ん中、心なしか好きになってる
だからこそ今回のことはバレないようにしないといけない
「好きだよ…心咲さん」
俺のことだけをずっと見てくれてたこいつに少しでも想いを返せるようになればいいなって最近では思うようになってきてる
「俺も」
「じゃあ今日は一緒帰れる?」
「っ!今日は…」
「何かあんの?」
「あぁ最近仕事溜めちまっててそろそろヤバイんだよ悪い」
「いいぜ別に、無理はすんなよなアンタすぐ熱出すんだから」
「お前に心配される程でもねーよ」
柔らかく微笑んで見せると類も返してくれる
とりあえず授業が始まるからとその場は別れた
…こんなの長くは続かない。
職員室に戻るとどっと疲れがきて机に突っ伏した
「大丈夫ですか?」
「ハイ…」
項垂れながらも阿久津に返答する
はっきり言ってしまえば大丈夫ではないのだが…心配はかけたくない
「無理してるのバレバレですよ」
「っ…」
「無理するのと頑張るのは違うんですよ」
カラン
と、音を発て置かれたのは缶コーヒーで、見上げてると阿久津は微笑んでいた
「では、俺はこれで」
「え…」
「すぐ戻ってきますよ、俺が居ない間は…」
「阿久津センセー」
「!」
「げ、陰険教師」
「な、なぜお前が居る」
職員室の扉から大きな声で阿久津のことを呼ぶ生徒―多分、心咲が一番好まない生徒…緒方啓だった
「俺が呼んだんですよ、コイツと一緒にいて下さいね」
そう言うと足早に職員室から出ていった
「「……」」
嘘だろ、コイツと居ろってのかよ
「なぁ」
「な、なんだ」
「あんた、狙われてんだろ?」
「は?あ、ぁ」
意外にも話しかけて来たのは緒方の方で…
何を話すのかと思えば誰から聞いたのか今おかれている自分のことだった
そのため下手な返しになる
大方、阿久津にでも聞いたのだろうと思う
「気ぃつけろよな」
「なんだ、やっと敬うことを知ったか?」
「誰がアンタなんか!じゃなくて!」
いきなりの緒方の発言に耳を疑い悪態をつく
対抗心を燃やした緒方だったがアホらしいとでもいうように目線を逸らした
「アンタになんかあると類が…心配するし、何するかわかんねぇから―あいつあんな性格だけど生徒会長で慕われてるからな」
類のことを話ながら微笑みはにかむ緒方に胸の奥が騒ぐ
「本当に…仲がいいんだな」
「なんか言った?」
「っ…何も言ってねぇよ」
「はぁ?絶対なんか言った!」
「言ってねぇ!つか、職員室なんだから静かにしろ!」
「なんだよ、ったく」
小言をいい拗ね始める緒方を尻目に空を見上げる
雲1つない空に今の心咲は逆に不安感に襲われる
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