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隙を魅せて。48
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「類っ」
「平気だよ」
「平気って…」
「何でもない、体温は元々高いんだ」
そう言うものの動こうとしない類の様子からそんなにいい状況ではないことに心拍数が上がる
「何でもないないってなんだよ…」
「え」
「関係ないみたいに言うな!兎に角ベッドまで歩けるだろ?肩貸すから、ほら」
「っ」
――
「8.4℃か…」
類の計った熱を温度計で確認しながら復唱する
体温高い、だけにしては高すぎる。
「風邪かな」
「…」
「いつからだよ」
「…」
「類」
「…帰りつく前から」
「それで避けてたのか…」
取り合えず冷蔵庫に入っていた冷えピタをおでこに貼り付ける
「もしかして、屋上で寝てたから…とか?」
「さぁ」
「俺が何回も…やめなかったし。もししてなくて授業にも出てたら…」
「心咲さん…あんたのせいじゃないから、深く考えんなよ」
熱の籠った掌で心咲の手を握ると微笑みながら握った掌に力を込める
「けどそれ以外思い浮かばねぇし」
「まぁ、大体の予想は出来てるから」
「だから屋上でだろ?」
「関係ねぇよ屋上のことは」
「なら…なんで言えないんだよ」
握られた手を握り返すと今にも泣き出しそうな心咲は切なげに言葉を漏らす
心配だから自分のせいだとしたら謝りたい。
なのに応えは曖昧でもどかしい
「はぁ…」
「!」
何かを考えるように黙る類はふと溜め息を付いた
「わかんねぇのかよ」
「…悪いかよ」
「はぁ…なんの拷問だよ、たく」
「?」
「…ここ最近ずっとアンタのこと考えてたんだ」
鼓動が脈打つのが分かる
類の言葉に動揺して目線を逸らす
「助けてやりたいのに何も話してくれない…かと思えば他の奴には相談してるし、それで寝てなかったり…自己管理に抜け目があった」
空いた腕で目を覆うように被せると類は顔を逸らした
「…ごめ、俺」
理由を聞いた心咲は小さく呟く
もし起こったこと全てを相談する勇気が少しでもあればきっとこうはならなかった
どう転んでも類の風邪は自分のせいだと分かった心咲は胸が締め付けられる思いだ
「アンタは悪くねぇよ」
「俺のせいだよ、だから謝るな」
「…心咲さん」
「なんだよ…」
「アンタは背負い込みすぎなんだよ」
「けど、これは完全に俺に非がある」
「…んなことねぇって」
「なにかしてほしいことあったら遠慮なく言え」
悪くない、と言い続ける類に心咲は胸が苦しくなる
いっそのこと一思いに俺のせいだと怒鳴られた方がマシだったのに
「心咲さん」
「ん?」
「帰った方がいいぜ」
「え…」
「別に1人でも大丈夫だから」
遠回しに“帰れ”と言うように言葉を紡ぐ類
いつの間にか繋がれていた筈の手も解かれていた
全てを語らずとも伝わる感情に胸が締め付けられる
俺が悪い、俺のせいなのに
俺のせいにしてくれない…っ
「…お前が帰って欲しいなら帰るけどそうじゃないならここに…居る」
せめてそばにいるだけでも…何も出来ないけどそれでも役にたてれば、俺は
「なら帰れよ」
「え」
「帰ってほしいなら帰るんだろ?帰れよ」
「んで…」
「…」
「帰らない、絶対帰らないっ!」
「心咲さん」
「嫌なんだよ!俺のせいなのに、俺が悪いのに!なんでお前が俺を庇うんだよ!帰るなって言えよっ馬鹿!なんで…っ」
「っアンタを攻めてどうなるんだよ…どうあがいてももう終ったことだろ、アンタが…心咲さんが俺の隣に変わらずにいてくれるならそれでいい、言わせんなよ」
「っ」
「だから帰れよ、移ったりしたら元も子もねぇだろ」
眉間に皺を寄せ苦しそうに顔を背ける類に近づく
静止はなかったがあからさまに離れてほしそうなオーラがあった
「なぁ類…」
「なに」
「多分、2度とこんな気持ちにならない。そうさせてんのはお前なんだよ」
「…」
「つまりはその心配かけてごめん、それと好きだ」
「…なにそれ」
「…なにって」
「自惚れるだろ、もう…」
苦笑気味に微笑むと少し熱をもった頬がほんのり赤色をしている
風邪のせいなのか、それとも違うナニカなのか…気にはなったものの声に出す前に心咲は口を閉じる
「キス、してもいい?」
「悪ぃ、俺が我満出来ない」
「んぅ、ふ」
「心咲さ…ん」
「っん…今はこれで我満する」
「ぅん」
「そんな顔すんなよ」
少し距離をあけると心咲は柔らかく微笑む
それから類の体調も心配し、付きっきりで見守る
恥ずかしそうに背を向ける類の背中を見つめ続け時々髪を撫でる
と、いつしか規則正しい寝息をたて意識を手放し眠りについていた
好きだよ…類
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