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①
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彼と出会ったのは一年前の冬。
同好会の仲間達と共に居酒屋を転々としていた。
ハジメ「つぎ、あっちだぁ」
イツキ「じゃ、おれのおごりでいいぜ」
こいつら、まだ飲む気か。
俺以外の全員がべろんべろんに酔ってしまっている。
俺「お前らそろそろやばいんじゃねーの?明日一限目から授業あるやつもいるだろ?」
酔っ払ってないのが俺だけだから一応止めるが、
イツキ「んぁ??あった気もするけどなかった気もすうー!」
必死に思い出そうとしている素振りだけでテキトーな返事を返す衣月。
タイキ「衣月におなじー」
カズヒコ「おらも!」
ケント「おれも!」
お前ら便乗してるだけじゃねーか
ハジメ「なーなー!夏は海いこーず!キレーな美人ちゃんも連れて!」
イツキ「おー!いーねいーね!ハジメにしては良い案だと思うわけよ俺は!」
行く気満々だし。
俺「おい、お前ら…」
ケント「竜雅はぁ?、真面目すぎ?」
右頬を、ぷにっと人差し指で突かれた。
タイキ「見た目こんなふりょーなのにな」
俺「すまなかったな見た目だけで。」
ギャハハギャハハと、笑い飛ばして歩く騒がしいあいつら。
ハジメとイツキが勝手に入店してしまったらしく、一向は急いで向かう。
ドンッ
タイキ「いだぁっ!」
肩をさするタイキに視線を移すと、
タイキ「とりま、ごめちょ?」
歩いていた若い子にぶつかったようだ。
相手は尻餅をついている。
俺「おいタイキ!」
「おぉー…りゅぅがぁー」
タイキはテキトーに謝罪するとハジメ達の元へと進んで行ってしまった。
俺「すまん、大丈夫か?」
タイキの代わりに謝り、手を差し出した。
「え…」
相手は差し出された手に困惑したのかおどおどとし始めた。
「ん?立てねーだろ?」
「あっ…すみません。」
キュッと握られた手はひんやりと冷たかった。
腕を引いて立たせようとしたら、相手がバランスを崩し俺の胸へ倒れる。
「ご、ごめんなさっ!」
相手は恥ずかしそうに頬を赤らめ、バッと離れた。
「あの、あちらの方も大丈夫ですか?思いっきりぶつかってしまったので…」
「あいつは平気だ。お前も気を付けろよ。」
「はい。」
相手はしょんぼりとする。
かなり幼く見える。
「つか、高校生くらいか?未成年がこんな夜中にフラついてるなんて、あぶねーぞ?今は男でもあぶねーんだから。」
「えっ、俺、」
辺りを見回すとタイキが居酒屋と反対方向に歩いてしまっていた。
「あっ、タイキ!そっちじゃねーよ!すまん、俺もう行かねーと。」
「あ、はい。ぶつかってしまった方に謝っておいていただけますか?」
「おう」
足早にタイキを追いかけていた時、ポケットの中に手袋を入れていたことに気がついた。
俺はタイキがいる場所とは逆方向に進む。
あの子は小さな歩幅でのんびり歩いていた。
「待て!」
びくっと肩を震わせて振り返る。
「これ、使え」
「え、えっ…」
自分が巻いていたマフラーを首に巻いてやる。
ポケットから手袋を取り出し両手にはめてやった。
手袋は表はレザーだが、中はフワフワで暖かいと思う。
「じゃ、気を付けて帰れよ」
頭をポンポンとしてやると、コクっと頷く。
俺はまた、タイキの後を追った。
「りゅうが…君か…」
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