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④
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ガチャ
「ただいまぁー」
パタパタと駆けてくる音がする。
「おかえり、兄貴」
微笑みながらコテッと首を傾げる。
クールな見た目とは対照的に、子供らしい仕草をするようだ。
「今日、仕事は?」
「休みだよ。」
よかった。水餃子作れる。
「そっか。じゃあ、水餃子作るね」
「ほんと!?俺、兄貴の水餃子好き!」
「照れるなぁ〜。いつも頑張ってるご褒美だよ」
俺の弟は凄い。
進学校を卒業して、ホストになった。理由はわからないけど…。
でも、一週間で、指名率と売り上げがそのクラブのNo. 1になった。
普通の人がどのくらいでNo. 1になれるのかはわからない。
俺は男だからクラブに行ったことがないし、キャバクラとかにも興味がないからわからないけれど、でも、凄いことだと思う。
高校を卒業したばかりの子供が、一週間でクラブのNo. 1だぞ。
多分、生汰なりに頑張ってきたからだと思う。
「兄貴、まだぁ?」
「もうすぐできるよ。」
俺は、自分の弟を誇りに思っている。
生汰は、生まれてすぐに施設に預けられた。
子供に恵まれなかった華さんが旦那さんと大切に育てた。
けれど、旦那さんが病気で急死して……それから、華さんと俺の父さんが出会った。
それで二人が結婚して、俺と生汰が出会えた。
生汰と出会えて、本当に良かったと思う。
父さんと華さんが交通事故で亡くなってから、俺たちは親戚中たらい回しだった。
俺一人だったら、どんなに辛かっただろうか。
でも、生汰がいたから、兄貴なんだからしっかりしろよって自分に言い聞かせることができた。
生汰は俺にとって、本当にかけがえのない存在だ。
「生汰、ありがとうね」
「ん?」
生汰はキョトンとした顔で水餃子を頬張った。
「あ、そうだ。生汰、佐々木さんとはどうなったの?」
「…え?…別れたけど?」
「え…?」
生汰の悪い癖だ。
「生汰、兄ちゃんあれほど言っただろ?ホストっていう職業もあるから、彼女とかは作りにくいかもしれないけど、人の気持ちは大切にしろって…」
「兄貴、食事中に説教は辞めろよ」
「……」
俺は思う。
俺は弟に甘すぎると。
「ハァ……。兄貴、仕方ないじゃん。俺、女に興味無いんだよ」
「何言ってるんだ?」
「ホストだから女が好きとは限らないだろ」
「それって…つまり」
「俺、男が好き。兄貴が一番タイプ。見た目も、中身も。俺の好み。」
「何言ってるんだ?女に飽きたから兄ちゃんを馬鹿にしてるのか?…楽しんでるのか!?」
「兄貴…、怒んないで。…楽しんで無いよ。ずっと、辛かったんだ…」
生汰が、俺を抱き締めて、涙を流す。
「生汰…」
「兄貴…好きなんだよ…兄貴が…ずっと、好きなんだよ…」
俺は、生汰から体を離し、距離をとった。
「生汰、ごめん…考えさせて…」
生汰の言っていることが、理解できなかった。
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