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基のはなし。
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俺、逢坂基(あいさか もとい)は、写真家である父、逢坂 林太郎と、元人気モデルの母の間に生まれた1人息子だ。
父は写真界では名の知れた有名な写真家で、俺はその影響で幼い頃から写真を撮って遊んでいた。
父の写真はこれといった垣根も無く、アイドル、歌手、ブランド、風景、自然、……とにかくいろんなものを撮っていたけど、どれも彼の世界というのがありとにかく他の写真家からは一線を画していた。
ーーー………まぁ、その代わりにと言ってはなんだが、プライベートは、ザ 破天荒。
母ちゃんがいるのに他の女連れ込むわ、毎日、酒タバコでどんちゃん騒ぎ。…………で、結局俺が小3の時にリコン。
俺はなぜか破天荒な父ちゃん側に引き取られ、そしてそれからアシスタントとしてこき使われまくった。
ーー…でも、俺はそんな父ちゃんが好きで、何しろカメラが好きで、…俺は父ちゃんの現場に毎回連れて行ってもらえるのがその頃何よりもの楽しみだった。
…………多分、父ちゃんは俺の事よりもカメラを愛していたと思う。
まだ小学生の俺に、いつも変な加工の仕方とか、他の人じゃできないような超難しい現像の仕方とかを教えてくれて(教えるというよりもただ語るだけ)、いつも物凄く楽しそうにカメラについて熱く語っていた。
…まだ小さくて、そん時の俺はほぼほぼ理解できてなかったけど…でも、俺はそんな父ちゃんが好きで、俺もまた、父ちゃんよりカメラを愛していたんだと思う。
ーーーー…んで、小6の時、そんな父ちゃんが俺にも、自分の周りのスタッフにも告げず勝手に急に行った中東の戦場で、爆破テロに巻き込まれてあっさりと死んだ。
……正直、急すぎて訳わかんなくて、…悲しいとか、涙とか一切出なくて。
その数日後に遺体の確認だかなんとかで行った病院の安置所にあったのは、爆破されて、他はもう粉々で見つからないとかいう、父の左腕だけだった。
俺にはそれが"あの"父ちゃんだなんていう判別もできなかったけど、3年ぶりに会った母ちゃんが泣き崩れながら「林太郎です」と言うもんだから、多分あれは俺の父ちゃんだった、らしい。
…………はっきりいってよく覚えてない。
…覚えてないけど、その時の俺は、極無意識に、いつも首から下げていた小さなライカでその小っちゃくなった父さんを撮り続けたんだ、。
…それで、またよく覚えてないけど、その写真がでかでかと全国新聞に載って、…最年少だとかで有名な写真賞を受賞した。
中学に上がると、既に出版社やギャラリーからオファーがかかり、中3の時に母ちゃんに引き取られて引っ越した田舎の中学校での生活を撮り続けた写真集を出した。
……それで、写真界の芥川賞と呼ばれる大きな賞を最年少受賞した。
さすがにこれは国内で結構大きなニュースになった気がする。
でも、"イケメン写真家"とか、ファンクラブとか、サイン会とか、記者会見とか…そういうのが一切面倒で、
自分の個展の最中にもかかわらず、1人で渡米して呼ばれていた大学の写真科に入学した。
それで向こうでの生活を撮った写真集でも向こうで賞取ったり、して、。
卒業と同時にこっちに帰ってきて、4年。
特に撮りたいものも無く、ふらふらと写真を撮って東京を過ごしている。
ーーーー……とはいうものの、生活していくにはやっぱり仕事も必要で、来たオファーはとりあえずなんでもやる精神で仕事している。
………………で、今回来たオファーが、この帝都大の仕事だった。
なんか政府が出してる無料のオンライン雑誌の連載で日本の最先端技術を紹介するコーナーだという。
……………………、んで、そのカメラマンが俺。
……正直、どうかと思わないか、。
…実の父親の死体を撮って脚光を浴びた俺を。
…中学校の生々しい日常を撮った写真集で名を馳せた俺を。
なんでそういう最先端技術コーナーのカメラマンと結びついたのかがまず謎だし、はっきりいって俺自身が向こうの要求に答えられるように撮れるかが一番の難儀だった。
ーーーーー……でも、多分向こうもそれを見越してのオファーだったと思うし、俺もちょっとこの"帝都大"というところに興味があったのだ。
……から、うけてみたんだけど……ーーーーー、、
「本当に意外だよね、。
………… なんで君が、こんな所の撮影をするのかって、。」
そんな事を笑いながらいうこの酒井教授は、多分結構俺のことを知っているらしい…、。
「……酒井さんも、そう思いますか?」
「んーーー?、うん。
……最初、アレーー?って思ったんだけど、何せ君が撮るっていうから、。
私はそれを聞いて、私が担当しますーー!って挙手しちゃった訳だ。
……はぁ、全くだよねぇ、?今、参加してるプロジェクトが結構忙しいっていうのにさ、。」
酒井さんはまた無邪気に笑いながらそういう。
……なんだろう…この人、、、。
二類の教授だからてっきりすんごいお堅い人かと思ったら、すごい気さくな人なんだけど、。
「ははっ、なんてったって私は、君の初個展を見に行ってるくらい昔から君のファンだからね!」
ニヤッと笑ってそういうその人は、はっきりいってあの白衣の第一印象とはガラリと変わっていた。
「……初個展…って……え、"lost scope"(中学生のときの個展)ですか、?」
初めてあの個展に行った人間と会って驚く。
「うん。……しかも、トークイベントの日にね。
小学生であんな写真を撮った君が、何を語るんだろうと思ったら、まさかのその日に渡米したとかなんかで中止。……あの日は泣く泣く写真集を買って帰ったよ。」
ふと酒井さんはそう言ってまた笑うと、「……まさか今大人になった君と話しているだなんてね。……ね」と感慨深そうに言った。
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