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堪える。
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「……………、アキには、俺がそんなすぐ被写体と関係を持つようにみえてんの?」
「…………っ、違うって信じたい…っ、!!…でも、あんなに綺麗な写真を見せられたら、そうなのかもって、思っちゃう…っ!!!!…もしかしたら、今までもずっとそうだったのかもしれないって、。…、っだって実際私とだって寝たじゃん…!!!」
俺のそんな静かな問いに、アキはそう怒鳴る。
……今までもずっと…って…、。
あーー……、、…正直、これは結構堪える。
俺がまずそんなにホイホイすぐ女を抱く奴だと思われてる事。
それから、被写体を抱かなきゃいい写真が撮れないと思われている事。
まるで、一気にアイデンティティを否定されたような気分になった。
アキが俺とセックスしかしてないのって、もしかして、綺麗に撮られたいからだったのかもしれない、そんな黒い考えさえ頭の中を回り始める。
俺は今どんな顔をしているんだろう、…。
自分の顔は撮った事がない。
まぁ、どうせきっと死んだ魚のような目をしているに違いない。
、あぁ、なんか、笑える、。
自分で理由を聞いた。、自分で理由を問い詰めた。
それにため息をついて、それで結局、自分が傷ついている。
…なんか、…もう事実がどうとか、どうでもいいや、
「……ははっ……」
タバコを口から離したと同時に乾いた笑い声をもらした俺に、アキは驚いて顔を上げた。
「……、モト、?」
「……ははっ……やっと気付いた?…つーか、それ知った上で俺と付き合ってんのかと思ってたわ、」
つらつらと心にもない事をタバコの煙と一緒に吐き出す。
アキの顔が煙の向こう側で、徐々に歪んでいくのが見えた。
「…今更そんな事言われて否定する気にもなれねぇな、。ははっ……!」
乾いた笑いが、だんだんと朝日が差し込む部屋に響く。
「…………、それ、本気で言ってんの、…?」
「…本気ってなに、?、つーか、アキこそ本気で俺の事好きじゃなかっただろ、。
お前が好きだったのは、俺が撮るお前、。
お前はアキを撮る俺に愛されたかったの。」
自分でも驚くほど、冷たい言葉が出てくる。
言葉は凶器だ。
嘘であろうと誠であろうと、受け取る側から見たそれは、ナイフにだって成り代わる
それがまるでそのまま見えるかのように、アキにその言葉が刺さり彼女の大きな目から、ブワッと涙が吹き出る。
それが不覚にも美しいなんて感じてしまう俺は、やっぱり冷たい人間なのだろうか、。
カシャカシャーーーー…っ、
反射的に、ベッドの脇に置いてあったカメラで彼女のの顔を撮ると、
バフッッーーーーー
「……っ、いって、ぇ」
彼女の手から白いマクラが勢いよく投げられて俺のカメラにぶつかって重力の方向に虚しく落ちた。
「……最っ低、…。」
気づいたら、頭上から今まで聞いた事のないような冷たい声が振ってきて容赦なく俺に刺さり、茶色いロングコートを羽織りながらその部屋を出て行く彼女が見えた。
そして、その数秒後に、バタン…という乾いた音が部屋にこだまする。
ほんの数分の出来事だった、。
ナイフのように自分に刺さったあの言葉たちは、未だ心に突き刺さったまま抜け落ちていなく、
「…………どっちが最低だよ……。」
遠に火の消えたタバコの灰が落ちるように、俺のそのつぶやきもふわふわと風にのって消えていった。
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