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神保町と都。
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ーーーーーーーーー…………、えー……と……?
は、…………え、…………どーしてこんな事に、……。。
ガタンゴトン……ガタンゴトン……
耳には地下鉄特有のジョイント音が響き、その音に合わせて心地よく体が揺れている。
時間は午後4時過ぎ。
そう、紛れもなく俺は今地下鉄に乗っていた。
普段だったらまだ大学にいて、日差しにうなだれながらも写真を撮っている頃だろう、。
……しかし今日は違う。
平日の午後ということもあっていつもよりは人が少ないが、やはり大都会東京。空いている席はあまりなく移動距離もそんなになかった為、俺は電車のドアに寄りかかる。
実を言うと俺は結構電車が好きで、仕事に行くのも写真を撮りに遠出する時も割と電車で行くことが多い。まぁ、一応車の免許も持っているのだが、まだ車はめんどくさくて買っていなく、そういう物理的な理由でもあるんだけどね、……
でも、この音とか、電車特有のにおいとか、……たくさんの人が同じ場所にいて同じ方向へと向かっているこの不思議な空間が好きなのだ。
音は普通に考えたらうるせえし、人がいるのも人嫌いな俺からしたら苦手なハズなのに、
不思議と電車の中のその音は、子守唄のように心地よく、人の気配もなぜか安心感をくれる。
そんで、ついつい気持ちよくなって寝ちゃったり、乗り過ごして遅刻したり、……なんてことは俺にしてはざらにある事なんだけど、…………まぁ、それもこれも"いつも通り"、の場合だ。
……そう、いつも通り……の場合の話、……
寄りかかるドアから心地よい揺れを受けつつ、俺は伏せ目がちだった視線をゆっくり上げてみる。
下の方から徐々に見えてくる黒いスキニーの足は男かと疑いたくなるように細くスキニーなのにぶかっとしていて、真っ白な白いシャツはキチッと一番上のボタンまで止めている。
そんな上まで止めて苦しくないのか、と言ってしまいそうになるが、その中からのびる首はやっぱり折れそうなほど細くて、そんな言葉など忘れてしまう。
普段はほぼ白衣姿しか見てなかったからわかんなかったけど、やっぱり体の線がめちゃくちゃ細い。……しかも、こいつが座席の横の手すりにつかまって俺と至近距離で向かい合わせになってるからわかるけど結構身長差がある事にも気づいた。
ヒョロっとしてっからもっと高いと思ったんだけどな〜ー……なんて、今はそんな事はどうでもいい!!!!!!!!
そう、、……。なんか動揺してどーでもいい事ばっかりグダグダ話してしまったが、
……今、俺は"あの"都と二人で地下鉄に乗っている…。
………さっきまで酒井さんの研究室にいた、……。いつも通り、……なのになぜこんな事になったのか、というと………
ーーーーーーーーーーー
「ユリウスも知ってんのかお前!!!すげぇな!!!!!!!!」
都がまさか俺の好きな超マイナー作家を知っていると知り、俺はすげぇ嬉しくてテンションが上がっていた。
気まずい空気なんてその時もうどうでもよくて、…
……っ、だって、ユリウスを好きになんて生まれて初めて会って、父さんでも知らなかったものだからすげえ嬉しくて、。
そんな俺に都もなんだかすげぇ驚いていて、しかもなんかすげぇ嬉しそうで、それでユリウスの作品の話とか好きな一文とか色々話していたのだが、(ほぼ俺が一方的に)
まぁついついそんな事にテンションの上がった俺は、「あ〜……、俺の行きつけの古本屋にすげぇユリウスの本があるんだけど、お前そこに連れて来てえわ。」
と呟いた。
……まぁ、それは俺のとても純粋なつぶやきで。
ただ、フェニックスが好きで、しかもユリウスまで好きで、…そこまで好みの合う奴と今まであった事がなくて、そんな奴とそんな本達に囲まれて色々話したいと思った。そう、ただ単純に。
でも、あの都が、。よりによってあの都が、……。俺と一緒にどこかへ行くなんて絶対にありえないと思っていた。、
だってそうだろ、?……あの超絶社会不適合者の都が誰かとそんな……どう考えたって無理だ。
……だから、俺も冗談でそういったんたけど、……
ギュ……
「……………、は、?」
無理だと思って次の話をしようとした俺の服の袖を、都がギュッと掴んだ。
俺も……それからその場にいた酒井さんも研究員達も、その事にはすげぇ驚いたのだが、…嘘だろ、と思いながらも「……、行く?」と俺が聞くと都がこくんと頷いたのだ。
ーーーーーーーーーーーーーー…
ーーーーー…………まぁ、そんなこんなで、都の研究が終わるのを待って、今に至るわけだけど、……
「……………………。」
「…………………………。」
ガタンゴトン…………ガタンゴトン…………
当たり前のように俺と都の間には会話一つすらなくただ電車に揺られる。
……都は相変わらずずっと俯いて何を考えてるのかなんて一切わかんねえし……
それに対して俺は、この状況をどうしようかと変な汗が出てくるしで………、
……、だってまさか本当に行く事になるなんて思ってなかったし、……!!……まぁ俺から誘ったっちゃあ誘ったけども、……でも、……都と二人でとか、……何話していいかとかわかんねえし、…………つーか第一こいつ喋れねえし……
……ってあれ、……こいつ別に本当に話せねぇわけじゃないんだし、俺と二人っきりだったら普通に話したりできるんじゃねえの、?
……ふとそんな事を思うが、……今ここでそれを提案した事によってこれよりも更に空気が最悪になるのなんて俺はやだし……
……、つーか、よくよく考えてみれば、……こいつは理由はわからないけど喋れないフリをしてて、……俺は言葉というのが苦手で、まさに俺ら二人は他大勢いる人の中でも"会話"ができない社会不適合者な訳で……
そのふたりが、……しかも二人っきりで、……どこかへ行くなんて、……って、…………、……よくよく考えるとこれ、地獄だよな、……??
……なんかテンション上がって、これまで来てしまっていたが、冷静になってみてなんて事をしてしまったんだと頭が重くなる。
…………あぁ、……俺らこれからどうなるんだろう、……
未だ電車の揺れ以外にピクリとも動かない都を前に、俺ははぁ……と都には聞こえないようなため息をついたのだった。
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