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死にかけのミドリ。
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「……、なぁ、都。」
「………。」
落ち着いたトーンでその沈黙を割く。
…都はどうせまた需要の無い気遣いだろうと思っているのか顔を上げない。
「………。」
「…………。」
「………、さっき、お前が喋れないって事、おばちゃんに言い訳みたいに言って悪かった、。」
「………、っ?」
「…ごめん。」
少しの無言の後に静かに落とした俺の声に、都は へ…?と顔を上げて俺をみた。
俺はそれを視界の片隅でボンヤリとみる。
「………、……」
「……………。」
「…………、それと…」
伝えたい、。………伝えたいのに、、感情が途切れ途切れになって出てくる。
…相手の言葉が聞きたいと思ったからって、自分まで苦手意識がすぐ治るわけじゃ無い、。
そんなすぐ治ったら俺こんな苦労してねぇし、…。
、…なんて言えばいいのか、…どうやっていったら相手を傷つけずに済む、?
やっぱり今まで言葉から逃げてきたせいか、全く思い当たらない、。
でも今俺がそれを悩んだら、…たぶん一生前に進めない、。
「…俺は都の事何もしらねぇし、…お前が喋らない事になんの理由があるとか、…そんなの知る由もねぇけど…、」
「…………。」
「……俺はお前が喋らない事に、なんの同情もする気ねぇから、。」
俺は静かにそう言って自分でも驚くほど真剣に都の目を見る。
「…………っ、」
いつも通りの無表情。
…でも俺のその言葉に、一瞬、長い睫毛にに隠された都の澄んだ目の奥がグラっと揺らいだ。
都にしたら厳しい物言いかもしれない、。
でも、…俺はこいつの芯に近い感情が知りたい。
…だから俺もこいつに取り繕った生ぬるい言葉を送る必要はないと思った。
「………………。」
「……、お前、生きてんだろ、?。喋ることが出来なくても、…自分を伝える事くらいフツーにできんじゃねぇの、?………まぁ、…お前が今までどういう他者との付き合い方をしてきたかわかんねぇけど、。」
「………」
「………つーか、同情とか、それを言い訳にしたら、本当に喋れねぇ人にすげぇ失礼だよな。」
「……………」
「……だから、俺がさっき都が喋れねぇのを言い訳みたいに言ったことあやまる。」
なんか自分で言いながらよくわかんなくなってきて、その恥かしさに都をジッと見ることしか出来ない。
でも都はその言葉にピクリと眉を動かすと、…なんか気まずくなったのか ス…、と俺から目を逸らしてしまった。
なんだか俺も気まずくなってまた目をそらす。
「…………。」
「…………。」
もう一度俺たちの周りを静かな無言が包む。
さっきと同じ、心地のいい静かな無言。
でも、明らかに俺の中でそれは変化していて、
……言葉で伝えることって、こんなにしんどかったっけ、。、こんなに、緊張したっけ、……、。
はぁぁぁ…………
心の中で安堵のため息なのか後悔のため息なのか盛大に息を吐いた。
……やっぱり言葉が苦手だ、……。
……でも、…なんか、スッキリした、。
久々にちゃんと人に謝った。
久々に自分の感情を言葉にした。
それが正解だったかは、わかんねぇけど、……
都には、ちゃんと伝えなきゃダメだな、……。
静かな無言に包まれながら、そうやってやっぱり俺はいつもみたいにいろんなことを考えてしまっていて、気付いたらこうやって悩んで、……
……だけどその悩みはいつもとは完全に違い、確実になにかの一歩になったのだった。
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