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死にかけのミドリ。
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「いらっしゃ〜い。」
そう野太い声で俺らに話しかけるおじさんは、全く俺の花屋の店員のイメージに合っていない。
どっちかっていうと、……築地とかで働いてそうなその人は、片手に何本かの菊の花、そしてもう一方の手には花バサミと、明らかに作業中です という身なりだった。
……まぁ、どうやらここの花屋は俗に言うオシャレなはフラワーショップという感じではなく、昔ながらの街の花屋、みたいな感じなのだろう。
「こんちわ〜……」
「……」
相変わらず都は目線を動かすだけなので俺が軽く会釈をしながらそう挨拶する。
「…、なんだい、にいちゃん達こんな時間に珍しいねぇ〜…あいにく今日はもう店閉める所だったんだけど、」
おじさんはそう言いながら慣れた手つきで茎を切って輪ゴムでまとめる。
おじさんの切った茎がバラバラと重力に従って床へと落ちいくのを目で追うと、店の床にはいま切ったのじゃないものも足されて沢山の茎が散らばっていた。
つーか……よく見ると店ん中すげぇ汚ね、。
…………ここの花屋もおばちゃんのとこの本屋と一緒で利益目的じゃねぇな、こりゃ……。
まぁでももう店閉める時間だったらしいし、昼間はまだ綺麗だったのかもしんねぇが……
「……あ、そうだったんすか、…」
「……そーそー、。ちょうどこの作業終わったら外の鉢、中に入れようとしてて、…」
おじさんはそういって目を店先の花たちに向ける。
「……あぁ、、そうだったんすね、…じゃ、お邪魔しちゃいましたかね、すいません、。」
「……ああ、いやいや別に、。どーせ今日も仏花しか売れてないからお兄ちゃんちみたいな珍しい客が来ると嬉しいよ!」
「……、そっすか、…なんかすいません、」
店主とそうなんの差し障りもない会話を弾ませる。(決して弾んではいない)
すると
「…、んで、にいちゃん達なんか欲しい鉢でもあんのかい??」
今度はおじさんが手に持っていた全ての物を置き、置いてあった雑巾で手を拭くと笑顔でそう聞いてきた。
……欲しい鉢……つうか、……
ふと都の方をチラリとみる。
……相変わらず都は俺たちを気にせず枯れた植物をじっくり見ていた。
「……あ〜……っと、…この植物はなんていう植物なんすか、?」
別に欲しい鉢もなにもねぇけど、なんとなく目の前にあるたくさんの生きてるミドリを指差してそう聞いてみた。
「…、ああ、これかい?!……これはクレマチスって言って、ツル性のキンポウゲ科の多年草だよ。……ちょうど今開花の時期でねぇ、今は閉じてるけど昼間は青紫色の綺麗な大輪の花が咲くんだ。」
「…へぇ…」
おじさんはそう生き生きと話し出すと、店の外に置いてあるクレマチスの中から特にいい奴を店内の光が届く所へと移動してくれた。
「ちょうどこの鉢はオススメでねぇ、!!…今年は暑かっただろ??だから窓にネットでもはっとけば勝手に緑のカーテンにもなるし、それに今うちで置いてるのはジャックマニー系っていってクレマチスの中でも大きな花を咲かせる種類なんだ!しかもとてもいい苗だしねぇ〜…オススメだよ!。」
「…….、はぁ。」
やっぱりさすが花屋の店主だけある。
さっき普段は仏花しか売れないとか言ってたけど普通の花に関しての知識が半端ないらしい。口から次から次に花への知識が溢れて、その中で俺が理解できたのなんて多分半分くらいだけだ、。
……まぁ多分要するにこのクレマチスを売りたいんだろう…………。
こうしてる間もずっと真剣に花の育て方や特徴を俺に熱弁してきていて、俺はなんとも適当に返事をしていた。
……まぁ俺は買う気ねぇんだけど、、、。
「……どうだい??とても魅力的な花だろう??」
とりあえずひとまず説明し終えたのか、満面の笑みでおっさんがそう聞いてきた。
口には出してないけど、この"買え。"という無言の重圧がなんとも言えない。
「…………そっすね〜、、。……っだってよ、都。……お前はどうなの?」
だいたい俺は別に植物に興味あるわけじゃねぇし、…。…植物に興味持ってるの都の方で、……
そう思っておじさんの矛先を都へと仕向ける。
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