アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
蜂の死骸と不死身の言葉。
-
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー…………
ーーーーーーーーーーーーーー…
「お世話になりました〜〜!!」
念の為発症から1日は様子を見たいと言われ、病院から出たのは昨日病院へ着いた頃と同じ夕暮れになった。
お世話になった先生方に都と並んで挨拶してから病院を出る。
昨日のぶっ倒れて一人じゃ立てない状態とは全く違く、都の足取りはちゃんとしていて俺の横を綺麗に歩く。
「……良かったなー、……1日で元気になって。…っつーかもう二度と蜂を素手で掴もうとかすんなよ。」
二人で病院から出て歩きながら「今度やったらマジで死ぬぞ」と脅しながら言うと、都は俺の方をチラッと見た後に口をギュッと結び、こくん……とゆっくり頷いた。
「……そーいえばお前、それは?……、アドレナリン注射器?」
ふと都の手にしている袋を見ながらそう聞くと、都がまたコクン、とゆっくり頷きその袋から説明書のような物を出して俺に手渡す。
アドレナリン自己注射【エピペン】注意事項
一番上にそう書かれたその紙、……あぁ、やっぱりそうだったのか
……まぁ、さっき都が医者から説明を受けてるのをなんとなく聞いていたからおおよその事はわかるが、アナフィラキシーショックが出た場合に太ももに自分で刺す注射で、もし、また都が刺された時や食物アレルギーが出た時に念の為、…と医者が都に処方したものだった。
そう納得して軽く都に礼を言いながらその紙を返す。
「……………。」
「………………。」
「…………なぁ、。」
「………………?」
またいつも通りの沈黙が始まろうとしたが、今日はいつもと違い俺が都に話しかけた。
前を向いたままの自分の視線の端で、都がくいっと俺の方を見上げたのがみえる。
「…………お前、何で蜂掴もうとしたの?」
「………………。」
視線の端でその肩がピクッと揺れたのがわかる。
ずっと疑問に思ってた事だった。
こんな大事になってしまって色々あったから忘れかけてたけど、…そもそもの所普通の奴じゃ絶対しないと思われる事を都がやったのが全ての始まりだし、……
よくよく考えたら蜂を手掴みとか…その筋の業者さんでも多分やんねぇし…
…その行為をあんな不意にやったという事を、無意識と取るか…それとも超故意的にやったと取るか……
そもそも普段から謎が多いやつだから無意識ってのもあるかもしれないけど、……多分都をそんな無意識に動かすほどの、感情やコンプレックスが大元にあるはず、…
だって、死にかけの蜂、……あれは俺から見ても痛々しいほどの"生"と"死"を感じさせたから。
そしてそれがきっと、この前の死にかけのクレマチスとダリアの切花との"差"を生み出している、
「……………………。」
「…………お前は、生きてるものが好きなの?……、それとも、……死を感じさせるものが嫌いなのか?」
「………………。」
「……あの蜂、…お前が嫌がったあのダリアと同じだよな、?………死ぬ事が分かっててあんな地べたに這いつくばってぐるぐるもがいて、…」
「………………。」
「……………お前があの蜂を掴んだのって、…あのダリアみたいに延命してあげようと思ったから?…………それとも自殺を知らない虫に、早く楽になってもらいたいと思ったから?」
「……………………。」
「…………それとも、本当に無意識?……何も考えないで蜂を掴んだりしたの?」
スタスタと俺の考えてる事を都にそのまま落とした。
都の本当の感情を聞きたいと思うのだから、俺が都に偽りのある事を言う必要はない。
もちろん都を傷つけたくはない、……でも、俺のその言葉が都にとってナイフになるか、助けの糸になるか、…それを考えるような余裕なんて俺にはなかった。
…………俺があげたあのダリアは、あの日から2日後に花壇の上で枯れているのを見かけて、都にはバレないように俺が勝手に処分した、。
……そしてあの蜂は、実際のところ都を刺した事によって力尽きて死んだ、……結果として悪い言い方をすれば、僅かでも都がその蜂の寿命を縮めた事になる。
……だから何が言いたいんだ、といえばそれはそうなんだけど、…都にしたら結果なんてどうでもいい事なのかもしれないけど、……
ーーー……でも、
どうやら都にとってそれはどうでもいい事ではないみたいだ。
そしてそれに俺の言葉で気づいたようだった。
パター……
今まで横を歩いていた都が、急にパタリと足を止めたおかげで、視線の隅から今までいた都の姿が急に消えた。
「…………………?」
俺はその都に気づくのが遅れたせいで俺だけが数歩前へと進んで足を止めた。そして急いで背後で足を止めた都を振り返ると、…
都がハッとしたような顔つきであわあわと目だけを震わすように動かす。
…………完璧に動揺してる……
「…………ん?…なんかした、?」
「……………………ッ」
バッーーーーー…………ッッ!!!!!
「…………………って、おい!!!!!!」
タタタタタターーーー……っ……
俺がそう声をかけた瞬間に、また都が急に走り出して俺の存在なんてあたかもないように隣をスッと走り抜ける、
…おいおいおいおい、……お前またかよ……
…急に行動する、思い立ったら周りが見えなくなる、
…………こいつがそういう性質を持ってる事にはもう気づいたけど、…なんでなのか、何を考えてるのかとかまったくわっかんねぇし、……
……やっぱりこうやってこいつに急に逃げられるのは何回目だとしてもなれない、…
どこ行こうとしてんのか全くわかんねぇし、……
…でも、今追わなきゃいけないと言うことはわかる。
(酒井さんがもしここにいたらきっと追えってまた怒られるだろうし…)
「……っ都、!!!!」
俺はそんな事を考えつつもまた遠くの方に見える都を追った、。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
93 / 130