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蜂の死骸と不死身の言葉。
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グイッ……
俺は今まで地面に着いていた手で、未だ俺の口を塞ぐ都の手を力尽くではずした。
俺の唇が何分かぶりに生温い夏の夜の外気へと触れる。
「…………なぁ、。……お前何様のつもりだよ、」
このときの俺は都との立ち位置とか考慮しなきゃいけないこととか一切考えてなかった。
ただその感情を拘束されたことへの嫌悪感だけで物事を進めていたのだと思う。
「………なんで死んだものが悲しみだって決めつけてんだよ。」
「……………………っ。」
「………お前は死に対する感情の番人なのか?その他の言葉を殺せるくらいの説得でも持ってんのか?あ"??!」
俺のその静かに放った威圧感に、都のその見開いた目の奥がぴき、…と裂けた。
あ、……………血、………………
俺の放ったその言葉が、都にとってナイフにかわったんだ
完璧な幻覚。
……でも確かに俺の目にはその言葉のナイフが都の瞳の奥の毛細血管を切ったように見えた。
実際に目は赤く充血して目の下の涙袋なんかぷく…と真っ赤に腫れて今にもはじけ飛びそうだった。
……でもそんなの今の俺に関係なかった、
……お前だけを傷つけてる訳じゃねぇ、
俺だって、さっきお前の放った何年越しの剣が、しっかり目に刺さったまま抜け落ちてねぇんだよ、
俺は自らの拳をぐっ、と握りしめた。
「………お前が死について悲しいと思うのは別にかまわねぇよ、全然いい、。……俺だって自分の感情の翻訳に胸張れるほどの自信があるわけじゃねぇから、。」
「…………。」
「………でもな、それをお前に拘束されるような義理なんて微塵もねぇ、…………!」
お互い傷つけあったギリギリの目を見開いて、かつてないほどの至近距離で訴え合う。
……ふるふるふるふる…
都のその目が血のように真っ赤に縁取られているにもかかわらず、我慢してるのかなんなのか、涙は絶対に零さないまま都がゆっくりと顔を左右に振る。
……なんだ?……この状況下に於いて、まだ自分の意見を貫こうとしてんのか、こいつ。
…………あゝ、今になってもう一つこいつと俺の共通点を見つけた。
何を言われても決して自分の意見を曲げない。
スッゲェ餓鬼で、すっげぇ頑固。
どんなに対立したとして、見た目上折れたとしても、決して自分には絶対に嘘はつかない。
……まぁこいつに至っては、今まで揺るぎ無く喋れないフリをし続けた訳だから、その時点で間違えなく頑固であるとは思うけど。
頑固と頑固がぶつかるとクソめんどくせぇ。
そんなのは分かってる、いつもだったら芯の自分が出てくる前に自分を出す事をエスケープしてるから。
でも、こいつの前でエスケープしようとかそんな逃げ道の言葉なんて、今更一ミリも思いつかなかった。
それはこいつも同じだったのだろう。
「……なぁ、俺なんか間違ったこと言ってるか?
お前がちげぇと思うなら、ちゃんとてめぇの口でちげぇって言え。」
普段から目つきが悪いと言われる、アメリカにいるときは結構ギャングに絡まれたりして、荒れてるときは結構激しく荒れてた。
そんな俺のそのドスの効いた声は、今まで大事に大事に育てられてきたエリートを絵に描いたような箱入りの都にとって、どれだけ怖かったかなんて考えなくても分かった。
普通の人間だったらすぐ怯むだろう、……でも都はその俺の言葉に目だけを逸らさないままずっと首を振り続ける。
そこらへんの不良漫画だったら「お前、怯まねぇのか、……やるじゃん」と認めてしまいそうなシチュエーションだが、都のその反応は今の俺のイライラを更に掻き立てた。
「…さっきは喋っといて…………何、?……………自分の言いてぇこといったらそれで言い逃げか?首ばっか降ってるだけじゃ、なんも伝わらねぇんだよ、。」
……ふるふるふる、……
「………っさっきは言葉で言えたじゃねぇか、!!……なら、ちげぇ理由をもう一回言葉で伝えてこいよ!!!!!」
………………ふるふるふるふる
都はそんな俺の怒鳴りにも近い言葉に対して、ただ依然と首を振り続ける。
…………さすがにこれには本気でイラッときた。
今の俺にとって、言葉を発さないただ首を振り続ける都は、店頭に立つペコちゃん人形となんら変わらなくて、そんな都に怒鳴る俺は、それよりももっと狂ってるように感じられた。
………馬鹿馬鹿しくなってきた、
なんで俺は無意味なものにエネルギーを費やしてるのだろう。
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