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誓い
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『これで、表彰式を終わりにします』
表彰式や報道陣の取材をすべて終わらせ、テントに戻ろうとしたとき、
「小野田ァ」
後ろから巻島さんに呼ばれた。
目配せをしてテントとは違う方に歩き出す。
付いてこい、ということなのだろう。
僕達が来たのはさっきまでレースをしていた峰ヶ山の頂上。
この山で一番高いところだ。
「スタートした時のこと、覚えてるか?」
〝ゴール取ったら言っておきたいことがあるんだが…〟
「はい…」
すると僕の方を見る。
二人の視線が絡み合う。
「俺はなァ…人付き合いが嫌いだった…自転車でしか会話できねぇからな…でもこれだけは自分の言葉で言いてぇ」
巻島さんの目は何かを決意した目だ。
「坂道…好きだ」
僕は驚きを隠せなかった。
いつもカッコよくて、速くて、優しい巻島さんが僕を好きだなんて。
でも、それ以上に嬉しさが増す。
だって…
「ま、きしま…さん…」
目頭が熱くなるのがわかる。
「ぼくも……好きで、す」
きっと初めて一緒に走った時から巻島さん自身に惹かれていたんだ。
気づけば巻島さんに抱きしめられていた。
「巻島さん…」
ぼくも抱きしめ返す。
「俺ァイギリスへ行っちまう…だからお前のこと縛り付けるつもりはねぇ…だがなぁ、諦めるつもりもないんだ」
もう一度僕の目を見る。
「だから坂道、待ってて欲しい」
僕の肩を掴んでいる手が震えてるのがわかる。
「俺は必ずお前を迎えに来る…だから待っていて欲しいんッショ」
僕は躊躇うことなく巻島さんの手を握り返し笑顔で
「はいっ…待ちます…いつまでも!」
そう返すと再び抱きしめられた。
やっぱり、僕はこの人には敵わない…。
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