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おやすみ
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それを聞いて、掠れ声で返事を返す。
「……ぁ、ご、めんなさ、ぃ」
……あぁ、これじゃあ全然届かないよ。
急に話しかけられて、思わずしどろもどろになってしまった。
もともと人と話すのは苦手だ。
いつもなら逃げるようにその場を立ち去っていたと思う。
でも、今の僕にはとても動く力なんて残っていなくて、邪魔だと言われたのに尚そこに座り込んでいた。
ーーがさり。
しばらくの沈黙の後、土を踏みしめる音と共に、その人が近付いてきた。
その人の顔がぼんやりながら見えた。
僕を見つめている綺麗な黒い目は少しも動かない。
一歩、また一歩、近付いてくる綺麗な人。
頭の中では〈どうしよう〉〈怒らせた〉〈殴られる〉と思考がぐちゃぐちゃになってうごめいていた。
それでもまだ、僕は立ち上がれなかった。
体が風が吹く度ガタガタ震え、びしょびしょで境内に座り込んだ僕。
なんて愉快な姿なんだろう。
ーー消えたい。
その人の歩く姿、顔立ち、僕を映す目さえ、あまりに綺麗すぎて、自分を激しく嫌悪する。
その瞬間、何故か激しく咳き込んでしまい景色が霞んだ。
咳が止まらなくて、苦しくなった。
丸くなってゼーゼー言っていると、僕のものではない、大きな手に背中をさすられる。
「大丈夫か」
心地よい低音に顔を上げると、そこには、
「……ぁ、ぁ、は……ぃ……あ、ぇ……大丈夫、です」
「そうか。 よかったなボウズ」
綺麗なその人が僕を抱え込む形でそこにいた。
大きい体に包まれて、体が強ばる。
……あ、でもこの人おひさまの匂いがする。
気持ちいい……
安心したら眠くなってしまった。
人様に抱えられて眠るなんて迷惑にも程があるぞ。
理性が訴えたが、無性に眠くなってしまって瞼が鉄のように重い。
少しだけ、少しだけ眠らせてください。
僕の意識はあっという間に途切れた。
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