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ユキツネの回想
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私の胸ですやすやと寝息をたてている少年をそっと抱き締めた。
外はもう薄く月が出ていた。
きっと一晩中、酒盛りは続くのだろう。
どうしても私はそこに戻る気にはなれなかった。
寝ている彼の顔をのぞきこむ。
その寝顔は、とても安らかでひとまず安心した。
ここに連れてきた時、といってもたった数日前だがーーは、酷い有り様だったのだ。
薄着の上体はびしょびしょで、抱き上げたときはその軽さと冷たさにびっくりした。
しかも顔は真っ赤で熱も出ていた。
うわ言でずっと謝り続けていて、見るに耐えなかった。
私が彼を抱いて連れてきた時、短気な椿が真っ先に憤慨した。
顔を真っ赤にして、「どうして人間など連れてきたんですか」と目を吊り上げていた。
私がムッとすると、
「人間は僕らと違ってすぐに死ぬ。自己管理もなっていない貴方に世話が出来るとお思いですか」
長年付き合って分かったことだが、椿は怒ると敬語になる。
敬語は禁止したというのに、しつこい奴だ。
「どうせ僕に面倒をみさせるんでしょ? 迷惑なんですけど!」
「うるさいな。 きちんと私が世話をすると言っただろ」
「……じゃあ、五日です」
椿は手を思いきり開いて私の目の前に持ってくる。
「なにが五日なんだ」
「五日経って、この子が貴方になつかなかったらこの子、返してきてください。
おやごさんだって心配しているでしょうし」
少々、面倒なことになったのだ。
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